Post on 12-Jun-2020
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■芸術療法の定義
Arts Therapy
さまざまな表現活動を通して行う精神療法(人
間を理解し、成長を援助する治療法)の総称
■領域
絵画療法、コラージュ療法、陶芸療法、
箱庭療法、音楽療法、詩歌療法、心理劇、
ダンス療法など
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その2
表現されたもの=作った人と見守る人が交流
することでもたらされる意義
→深い内的世界の理解と交流
→作品を媒体にした想像による交流
→作品に投影された無意識内容の分析
その3
表現活動と集団=相互作用の持つ意義
→対人交流の活発化
→シェアリングによる気づき
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原理Ⅱ
②遊び
子どもにとっての遊び=成長の手だて
→発散、レクリエーション、カタルシス、抑圧された情動の解放、喜び、慰め、鼓舞、鎮静
→内的世界の形成
原理Ⅲ
③創造性
イメージや象徴による表現に活力を与える
創造性・・・・・・・→生きていく力
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■導入する際の留意点
その1
-計画的に行う
-目的を明確にする
-安易に行わない
-漫然と行わない
-実施対象の好みと意志を尊重する
-中止する勇気を持つ
その2
病態レベルでの把握
a 明らかに自我障害がある 禁忌
b 自我境界が希薄 自由連想法的、退行促
進的なものは禁忌
c 自我障害のおそれがない 可能
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■コラージュ
collage フランス語で糊付け(する)ことの意味
-現代美術の技術の一つ
-雑誌やパンフレット、カタログなどの既成のイ
メージを、はさみなどで自通に切り抜き、それを台紙のうえで再構成し、糊付ける
■美術史におけるコラージュ
パピエ・コレキュビズム(立体主義)の技術の一つ。抽象的な画面に、新聞紙や切符、楽譜、ラベルなどの断片を貼り付ける。
ピカソ『籐椅子のある静物』(1912)を発表、これ以降1914まで盛んにコラージュを制作する。
マルセル・デュシャン『自転車の車輪』(1913) 初めてのレディメイド作品
マックス・エルンスト『百頭女』(1929)
シュールレアリスム(超現実主義)運動
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■日本での動き
美術として
1977 横尾忠則 1987 池田満寿夫
個人心理療法として
1986 山中康裕 クライエントの自発的な制作
1987 森谷寛之 治療技術として導入、発表
1989 森谷寛之、杉浦京子・入江茂、発表
■コラージュ療法の実際
-準備するもの
-教示
-時間
-場所
-方法
-特質 など
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準備するもの
①素材 雑誌、パンフレット、カタログ、チラシ、
新聞、マンガなど
②台紙 A4~A3、B4~B3判の画用紙また
はケント紙
③その他 糊、テープ、ハサミ、カッターなど
教示
これらの切り抜き(雑誌やパンフレット)のなか
から、自分が気になるもの何か心ひかれるもの
を選び(切り抜き)、台紙の上で構成して下さい。
それができましたら、糊付けして下さい。
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特質
◎簡便性
-表現上の技術はほとんど問わない
-広範な対象に実施できる
◎治療的要因が強い
-心理的な退行を促す
-自己表出が可能である
-自己表現と美意識が確保できる
-作品の完成がもたらす達成感を味わえる
-内面の意識化も可能である
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◎「自分らしさ幻想」からの解放
-選択の自由 嫌なら切らないでよい
-組み合わせの自由 あらゆる組み合わせが可
能である
-自由自在に自分が作った作品は唯一無二の
ものである
■コラージュ・ボックス法
雑誌などから、あらかじめ絵や写真、文字など
を切り抜いておき、箱に入れておく。そこから紙
片を選んでもらう。
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素材を集める際の留意点
-できるだけ自己表現がしやすいものを集める
-可能な限り幅広い主題や領域から選ぶ
特質
-事前に切片の内容がわかっている
-危ないイメージを取り除けるなど内容の調整
ができる
※集団での使用はむずかしい
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■マガジン・ピクチャー・コラージュ法
自分が日頃見慣れている雑誌などを、自分で
切り抜く。
特質
-集団でも使用できる
-思いもよらぬ表現が生まれることもある
※何が表現されるかわからない
※制作者の想像力がもたらす制限が見られる
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■フィードバック
◎話し合う
-作っている時何を感じていましたか?
-この切り抜きとてもいいですね、何でしょう
か?
-終わった今どんな感じですか?
※解釈や評価を優先させない
■適用の際の留意点
◎自由と安心の保障
なにを表現してもよいし、表現しなくてもよい
◎共感的理解
制作者の内的な世界に関心を寄せる
◎制作の自由
強制的に作らせない
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◎集団で行う時
無理やりしない 自由であること
作品をバカにしない 尊重すること
成績と関連づけない 評価しないこと
■アセスメント
刺激が無造作、手続があいまい
→評価法として弱い
→断定できないしするべきではない
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アセスメントの6段階
1 話し合い
2 作品からうける印象
3 象徴的な解釈
4 切り方、貼り方
5 空間の使い方
6 時系列での理解
1 話し合い
もしタイトルをつけると?
この作品のテーマは?
どの紙片が好き?
あなたはどこにいるの?
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2 印象
全体から受ける感じは?
バラバラでまとまりがない
乱雑にただ置かれている
どこか投げやりでいいかげん
まとまっていて安定している
3 象徴
物
食べ物、乗り物、衣服、靴、バック、装飾品、化
粧品など
人
性別、年代、職業、パーソナリティ、ヒーロー・ヒロイン
など
他
神話や伝承、ジェンダーアイデンティティ、性など
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4 切り方
小さいー大きい
四角いー丸みを帯びる
ていねいー乱雑
内容を大切にして縁取るー無視
ありきたりー独創的、デザイン的
貼り方
枠としての紙のサイズにおさめるーはみ出す
単独で置くー重ねる
常識的ー倒置するなど独特な貼り方をする
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5 空間の使い方
内的
身体的
外的
精神的
全体性self
6 判断軸(森谷、1999)
自己像を確認することで視点が定まる
時間(過去ー現在ー未来)、空間(上ー下、右ー
左)、内向ー外向、思考ー感情、意識ー無意識、
女性性ー男性性、エネルギー(高いー低い)、テ
ンポ(早いーゆっくり)、冷たいーあたたかい、暗
いー明るい、具体的ー抽象的、身体ー精神など
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7 時系列的な理解
3要素:
何が(内容分析)
どのように(形式的分析)
どこに(空間象徴)
これらの変容の様子を見る
■集団コラージュ
-5~8人を目安とする
-テーマを決めて作るか、決めずに作るか話し
合う
-作り方を話し合う
-完成後、作成のプロセスで感じたことを話し合
う