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2016 情財第 298 先進的 IoT プロジェクト支援事業 生コンクリート品質連続管理システム スマートアジテーターの開発 成果報告書 委託先:GNN Machinery Japan 株式会社 担当メンター:小澤尚志・相田幸一・萩沢巧 2017 9 29

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2016 情財第 298 号

先進的 IoT プロジェクト支援事業 生コンクリート品質連続管理システム

スマートアジテーターの開発

成果報告書

委託先:GNN Machinery Japan 株式会社

担当メンター:小澤尚志・相田幸一・萩沢巧

2017 年 9 月 29 日

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目次

1. 要約 ........................................................................................................................................... 3 2. 背景および目的 ......................................................................................................................... 3

2.1 生コン業界の現状と本システムがもたらす効果 ................................................................. 3 2.2 本システムの活用方法 ......................................................................................................... 5

3. プロジェクト概要 ..................................................................................................................... 7 3.1 本システムの目指す機能構成 ................................................................................................. 7 3.2 ビジネスモデルの詳細 ........................................................................................................... 11

4. 実施内容 .................................................................................................................................. 14 4.1 実証実験協力工場 ................................................................................................................. 14 4.2 本システムの日本国内での性能、法準拠確認、検証 .......................................................... 14 4.3 提供価値の検証 ..................................................................................................................... 20 4.4 ビジネスモデル検証 ............................................................................................................. 29

5. プロジェクトの成果 ................................................................................................................ 41 5.1 スマートアジテーターシステムの日本国内での性能、法準拠確認、検証.......................... 41 5.2 提供価値の検証 ..................................................................................................................... 54 5.3 ビジネスモデル検証 ............................................................................................................. 67

6. 事業化に向けた課題と展望 ..................................................................................................... 85 6.1. 本システムの堅牢性に関する課題と今後の対策 ............................................................. 85 6.2. コスト削減・品質向上効果の精査など提供価値の更なる精査 ....................................... 85 6.3. エンドユーザーへの提供価値の「見える化」とそれを通じた今後の販売戦略 ............. 85 6.4. 取付代理店を通じた販売促進とビジネスモデルの確立 .................................................. 87 6.5. アンケート結果に見るセグメント分析結果と今後のマーケティングプラン ................. 88 6.6. 海外製無線設備導入における課題 ................................................................................... 89

7. 付録 ......................................................................................................................................... 92 7.1. 用語説明 ........................................................................................................................... 92 7.2. 関連 Web サイト .............................................................................................................. 93 7.3. 別添資料 ........................................................................................................................... 93

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1. 要約 本プロジェクトでは、生コン車のドラム部分に取り付けた多機能センサーと、GPS 位置情報

システムを組み合わせた、画期的な生コンクリート品質連続管理システム、スマートアジテータ

ー(詳細は 3 章参照。以下「本システム」という。)を用いてユーザーへの提供価値検証とビジ

ネスモデル検証を行った。全国の生コン工場 5 社に本システムのプロトタイプを 5 台ずつ配備し、

以下 7 点の実証結果が得られた。

①システムによるコンクリート品質測定精度検証結果 ②システム不具合(初期不良)検証(フィールドテスト)結果 ③検証結果及び仮説を元としたコスト削減効果検証 ④生コンの事故抑制率の仮説を元とした品質向上検証結果 ⑤付加価値の販売実績検証結果 ➅ビジネスモデル検証結果 ⑦海外企業との連携においての障壁等の実例 結果、システムには当初初期不良が散見されたものの、測定精度も非常によく、コスト削減にも

一定の効果が確認する事ができた。しかし一方で、海外システムメーカーと日本の中小企業の団

体とのコラボレーションという稀な連携における、様々な問題点も明らかになった。 2. 背景および目的 生コンクリートは、製造後すぐに化学変化が始まり、刻一刻とその状態が変化する特殊な製品

である。これまでは、製造から納入までの変化を経験と勘に基づいて予測する職人的な製造方法

が取られてきた。また、製品検査では人の手によるサンプリング検査が行われてきた。これは統

計的裏付けをもとにしたランダムサンプリングを行うものであり、人が行うことによる不確実性

など、試験の再現性とばらつきが課題とされてきた。今後、業界の人手不足が更に深刻化してい

く中で高度化するエンドユーザー(ゼネコン、施工者、発注者など)の品質要求には到底対応し

きれない事が予想される。 本システムを導入する事で、人の手を介さない生コン性状の自動計測を行う事が可能となり、

生コン品質の全数管理を実現することができる。これにより、さらなる安全性の確保とともに、

業務従事時間や関連コストを削減する等、生コン・建設業界の様々な問題や課題を解決できると

考えられる事から、本システムの開発、普及を図る礎を築く事を本プロジェクトの大きな目標と

した。 本システムで得られた生コンの性状変化データは、いままで知り得る事ができなかった生コン

の製造から打設までの貴重なトレーサビリティーデータとなる。現状、このようなデータは本シ

ステムでしか取得する事ができない。このデータを活用する事で、エンドユーザーはその顧客に

対し、何らかの不正や事故が無かったことを証明する納入管理データとして提供する事ができる

だけでなく、CIM や BIM と連動する事で高度な施工管理を行う事が可能となる。その為、取得

データの潜在的顧客ニーズは非常に高く、管理、販売する事で生コン事業者の新たなビジネスと

なる可能性を大いに秘めている。 2.1 生コン業界の現状と本システムがもたらす効果 (1)業界における課題 2007 年以降、国内人口減少と共に人材・労働力不足が各業界で顕著となり、若年層の技術職へ

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の不人気も手伝い、とりわけ、建設業及びその関連業種での人材確保は急務となっている。一方、

施工会社では、数々の偽装や不正問題の発生で、構造物の品質確保のための規制強化や管理業務

負担が増加し続けており、現状熟練者不在になれば管理不能になる恐れが現実のものとなってい

る。 しかしながら、これらの現実をもってしても、生コン業界において本システムのような IoT 技

術を活用検討する活発な動きはまだ見られない。 これは、業界の特長として、セメントメーカーが一部都市圏で「みなし大企業」として操業し

ているが、そのほとんどが中小零細中心で構成されている。また、セメント主軸の業界ではカル

テル除外の協同組合共同販売により競争原理が排除される事で、イノベーションが起こりにくい

構造である事などがあげられる。 減り続ける熟練技術者のスキルを伝承し、品質を維持する事が急務である。 (2)本システム利用による効果 本システムを利用する事で経験と勘に裏打ちされてきたこれまでの職人的技術力を補完する事

ができれば、例え経験が浅い担当者であっても、精度よく生コンを製造する事が可能となり、大

幅な労働環境改善を行える等、様々なメリットが期待できる。 本システムが生コン事業者にもたらすと考えられる様々な効果を【図 1】と共に示す。 ①製品品質の向上

a.既往のコンクリート試験から人による不確実性・恣意性を排除した史上初の生コンクリー

ト品質評価システム b.今まで得ることが不可能だった輸送中の生コン性状に関する時系列ビッグデータ(品質変

化・輸送条件・気象条件など)を活用し、高精度の品質変化予測が可能

②製造コストの削減 a.品質変化予測が高精度で可能となり、適正な配合設計が可能(製造原価の削減) b.製品の歩留まり向上による、費用削減が可能 c.GPS リアルタイム情報表示を活用した配車業務の効率化 d.業務対応時間の短縮(人件費圧縮)が可能 ③生コン販売単価の向上 a.付加価値の高い、生コンデータの販売が可能 b.製造販売価格の維持(単価維持の根拠(品質向上、担保の切り札として使用可能) ④労働力確保・労働環境改善 a.熟練を必要とせず高品質製品を安定供給可能 b.中小企業における離職率の低減効果(労働環境改善や、イメージ向上)

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2.2 本システムの活用方法 本システムは、ユーザーだけでなく、エンドユーザーにも多種多様な効果を生むと考えている。

以下、具体的な活用方法を取りまとめた。 (1)ユーザーでの活用 【運搬中の生コンの状態や車両情報を「生コン事業者」側で監視し、業務改善等に活用】 生コン製造会社の配車、品質管理はもとより、納入先での施工管理の労力が大幅に軽減される。

さらに、収集されたビッグデータにより今まで不可能だった傾向分析や、高精度での製造品質管

理等が可能となる。ドライバーへもリアルタイムで情報をフィードバックできるため、品質管理

に係る労力も軽減することができる。 また、規格外品納入による損害発生リスクを抑える事が期待される為、本システムを利用した

場合に、生コン業向けの PL 保険の保険料を低減できる特約が成立する可能性がある。これは、

生コン事業者にとって大きなメリットとなり、システム導入の大きな動機付けとなる。 (2)エンドユーザーでの活用 【運搬中の生コンの状態や車両情報を「ゼネコン・施工者・発注者」側で活用】 建設現場向けとしては、リアルタイムでの車両運行情報を生コン事業者と共有できる事で、納

入に関する作業工程が省力化できるだけでなく、無駄な出荷、すなわち残コン、戻りコンと称さ

れる廃棄コンクリートの発生を抑制でき、建設コストの削減に直結可能となる。また、トレーサ

ビリティーデータを活用する事で、これまで不可能であった全量納品検査が可能となり、何らか

の不正や事故が無かったことを証明する納入管理データとして購入者に提供したり、CIMやBIMと連動したりする事で、より高度な施工管理を行う事が可能となり、施工品質向上や、施工管理

の労力が大幅に軽減される事が期待できる。 一方、研究部門においても、コンクリート経時変化を正確に計測、記録できる機能を生かし、

実験用データロガーとして活用する事で、今まで得る事が不可能だった膨大な点数のコンクリー

ト変性データを得る事ができる。こうした取得データは研究部門でのニーズが非常に高いと考え

られる。

【図 1】生コン業界の現状と本システムがもたらす革命的変化

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(3)対象とする市場の考え方 労働力確保や労働環境改善、データ販売に関してはどの地域でもニーズは顕在化しており、全

国の工場でシステム導入の理由として考えられる。 一方、品質向上等による製造コスト削減はその出荷数量により、得られる効果に大きな差が発

生する部分である。現状、日本での生コンの出荷量は、大都市圏に偏重しており、都市部では、

高層建築物等、高度な品質管理が求められる民間構造物が多い。対して、郊外では、戸建建築等、

小規模の民間構造物があるものの、道路や河川、山間での公共事業が大半をしめる。 そうした現状を考慮すると、本システムを経済的なメリットを享受できる物としてだけ捉える

のであれば、まず都市部に展開する比較的出荷数量が多く、保有車両が多い事業者に取り入れら

れる公算が大きいと考えるのが一般的である。 一方、エンドユーザーであるゼネコン、建設会社においても、本システムから得られるトレー

サビリティーデータや、納入に関する有益な情報等の価値は大きいと考えられ、本システムの認

知が進むにつれ、エンドユーザーから生コン事業者に対しての導入奨励が進み、加速度的に設置

数が増加すると予測される。 以上の観点から、本システムを効率的に普及させるためには、その価値に気づいた意識ある全

国の事業者を対象に全国同時に展開し、コスト低減等の経済的メリットのみを目的とした一般的

なユーザー予備軍に対して、運用方法や効果を実際に提示、紹介する手法を取り、ハブ工場化さ

せる事が望ましいと考える。 今回のプロジェクトは、GNN Machinery Japan 株式会社(以下「当社」という。)の母体で

ある、全国約 100 社が加盟する中小零細生コン製造事業者の任意団体、元気な生コンネットワー

ク(以下「GNN」という。)を活用し、全国規模で効果検証を行った事が大きな特徴である。ユ

ーザー(生コン製造事業者など)自らが検証や普及を推し進める事で、一部の企業や団体にこの

技術を独占される事なく、今後の一般的な技術として広く浸透させる事も目的としている。その

為、当社は本事業で大きな収益をあげる事に重点は置かず、生コン事業者に対し本システムを広

く、安価に広めていく為の適正な価格設定等を探る事を重要視し、検証を行った。

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3. プロジェクト概要 この章では、本プロジェクトにおいて、検証対象となったシステムの機能構成、及び、ビジネス

モデルの詳細を述べる。 3.1 本システムの目指す機能構成

運搬中の生コン性状を測定、記録する Probe システムと、GPS 車両位置情報や車両のエンジン

運行情報、ドライブレコーダー機能等を持った、車両総合管理システムを統合させた、世界初の

生コンクリート品質連続管理システムをスマートアジテーターと位置づけ、海外のベンチャー企

業と共に開発を進めてきた。システム概要図を【図 2】に示す。

本システムは通信端末を内蔵しており、携帯電話回線を使用し、リアルタイムでクラウドサー

バーに様々なデータを格納する。利用者(生コン製造会社のみならず、施工者や、発注者等)は、

スマートフォンやタブレット、PC等のデバイスで、いつでも、どこでもデータを確認、分析する

事が可能になり、コスト削減や、利便性が大幅に向上できる。また、得られた膨大な生コンデー

タを製造プラント設備にフィードバックする事で、完全なトレーサビリティーの確保や、大幅な

製造品質向上等が見込まれる。

システムの通信用端末にスマートデバイスを用いる事で、様々な機能(例えば、IP無線・カー

ナビ・ドラレコ等)をアプリケーションとして任意に追加する事ができ、通信費を含め、安価に

最先端の IoT、ICT技術を導入する事が可能になる事も大きな特長としている。

【図 2】スマートアジテーターシステム概要図

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(1)開発済みの範囲(Probe システムとは) ①開発経緯

ドラム内生コンクリート性状記録システム(Probe シス

テム)は、カナダのベンチャー企業である IBB Rheology

社の代表、Denis Beaupré氏【写真 1】が開発した、画期的

な装置の事である。

Denis 氏は Rheology(物質の変形および流動一般に関す

る学問分野の事を表し、 日本語では「流動学」とも呼ばれ

る。)の教授という肩書をもち、当初から生コンクリートの

性状測定に Rheology の考え方が応用出来る事に着目

していた。

1996年には Probeシステムの基礎となる、据え置き

型のコンクリート測定装置【写真 2】を開発し、販売を開始した。

販売を続けるうちに、ユーザーから生コン車のドラムの中のコンクリートの性状が計測できな

いかとの相談を受けるようになる。というのも、カナダやアメリカでは、ドライバッチ輸送とい

うものが行われており、その品質安定に腐心していたからで

ある。

生コンクリートとは、砂、砂利、セメント、水を適量混ぜ合

わせたものである。その際、セメントが化学反応を起こして、

徐々に硬化しながら砂や砂利を繋ぎ合わせるいわば接着剤の

ような働きをして全体を硬化させていき、コンクリートへと

変化する。

日本の生コン製造工場では、この「生コンクリート」の状

態にしてから、ミキサー車に積載し、建設現場へと運搬する。

建設現場では型枠等を作成し、その中に生コンクリートを流

し込む(打設)する事で、用途に応じた様々な形状にコンク

リート構造物を造る事が出来る。

一方、カナダやアメリカでは、輸送距離が長い事や、プラン

ト設備を安価に抑える目的で、砂、砂利、セメントだけを混

ぜ合わせた乾燥状態の物をミキサー車に積載し、水だけを後

から添加する方法を取る場合がある。これを「ドライバッチ

輸送」と呼んでいるが、水の添加量を誤ると、重大な品質問題

が発生してしまう恐れがある。

水を添加するのはおのずとドライバーが担う事になり、調整は目視する他なく、経験が必要で

あり、品質管理が難しいという側面があった。

これを解決する方法として、人の手を介さない生コン品質の測定システムの登場が待たれてい

たのである。

2008 年、Denis氏は Probeシステムの開発に着手し、実用化に向けて、実験、研究を続けてい

た。

システムが完成し、販売開始されたのとほぼ同時期、2012 年 11 月に GNN と面識のある海外薬

品メーカーからの紹介を受け、GNN第 1回技術発表会で、Denis 氏が来日。Probe に関するプレゼ

ンテーションを行ったのをきっかけに、日本に 10本をテスト導入した。テスト使用の結果、その

【写真 1】開発者 Denis Beaupré氏】

【写真 2】据え置き型

コンクリート測定装置】

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技術に感銘を受けたことから、2014年 10月に GNN会員有志 5社にて、当社を設立し、Probeシス

テムの販売代理店契約を締結するに至った。

その後、ゼネコン 10 社との共同実験研究会を立ち上げ、性能的、法規的にも、現在の生コン品

質測定方法にとって代わる事が可能かどうかの性能検証試験、評価等を行ってきた。

このように当社が得意とするフィールドテストの結果を受けて IBB社は製品開発・改善を行う

という協力体制が構築された。

ベンチャー企業である IBB社は 2016 年 4月、アメリカのコンクリート、アスファルトプラント

制御システムメーカーである Command Alkon社に経営譲渡された。

Command Alkon 社は Fivecubitsという車両動態管理システムを持っており、アメリカ国内ではす

でに 30000台が実稼働していた。これに IBB社が保有する、荷台部分の情報、つまり生コンの状

態を精度よく検知できるセンサー技術を統合することで、より効果的な品質管理を実現できる可

能性が出てきた。

②Probe システム構成 Probe システムの構成図を【図 3】に示す。

Probe システムは、ミキサー車のドラム部分に取り付けられたプローブセンサー部、その情報

を蓄積、表示するレシーバー部、データを可視化するロギングシステム部の大きく 3 つの部分に

分けられる。センサー部分には、圧力測定センサー。温度センサージャイロセンサーが組み込ま

れ、そこから得られた情報を加工する事で、次の 6 つの情報を得る事ができる。 a)ドラム回転情報(方向と速度)・ b)スランプ推定値・c)粘性・降伏値・d)温度・e)積載量

f)ステータスの発生時刻

次に測定方法とデータの流れを示す。【図 4】に示したように、Probe 部はミキサー車のドラムの

表面から中心方向に向けて設置されている。Probe 部はドラムの回転と共に、積載された生コン

を横断するように接触しながら、圧力や温度を計測していく。Probe部で得られた情報をReceiver

【図 3】Probeシステム構成図

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部が受信すると、圧力値をスランプ値や、粘性、降伏値等の生コン状態を示す指標に換算する。

データは表示部にリアルタイムに表示されながら、時刻と共に記録、蓄積されていく。蓄積され

たデータは通信端末を介し、サーバーに送られ、一元管理される。データはグラフ化したり、CSVデータとしてアウトプットしたりする事が可能である。 (2)開発範囲(データのリアルタイム転送機能追加と、GPS 動態管理システムとの統合) Probe システムは画期的な生コンの性状記録装置であったが、情報をリアルタイムにサーバーに

転送する事が出来ないというデメリットがあった。当時から当社はスマートアジテーター構想を

思い描いており、旧 IBB 社と独自に開発を進めていたが、譲渡先企業 Command Alkon 社(以

下 Command 社)では、既に保有している Five Cubits という車両総合管理システムと Probe シ

ステムを統合した、まさに当社の考えるスマートアジテーター同様のシステム構築を模索してい

た。 そこで、今回のプロジェクトでは、【図 5】に示した、Command 社が開発中のシステムをスマ

ートアジテーターのプロトタイプと位置づけ、プロジェクト検証を行う事とした。

【図 4】測定方法とデータの流れ

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(3)電波法認証作業の遅延と疑似的スマートアジテーターによる検証作業

このシステムを日本国内にプロトタイプとして導入するに際し、日本法規準拠対策、日本語化、

不具合修正、日本のユーザー要望の反映等、独自の対応が必要不可欠であり、この部分について、

Command 社の協力を得ながら、作業の早期完了を目指していた。 一方、プロジェクト開始時点で Command社ではメインユーザーあるアメリカ、カナダ向けの、

システム開発作業が継続されていたが、機能的には検証の使用に耐えられるレベルにあると判断

をしていた。

しかし、車両総合管理システムに使用している通信端末日本国内の電波法認証に係る部分で、

機材製造会社の協力が思うように得られず、結果として検証期間内に認証を得るに至らなかった。 期中の時点で、検証内容にも大きな影響が発生する事が予想された為、影響の及ぶ範囲を極力

抑える為に、【図 6】に示したような、国内既存の GPS システムと、Probe システムを並行的に

使用した、疑似的スマートアジテーターシステムを使用し、提供価値、ビジネスモデルの検証を

行う事とした。

3.2 ビジネスモデルの詳細 【図 7】に示したように、当社は開発委託先である Command 社から、ハードウェア及びデータ

等のサービスの提供を受け、それらの維持管理を行いながら、国内の生コン事業者などのユーザ

ーにハードウェア、データサービスを含めたシステム全体の販売、レンタルを行う。Command Alkon 社へは、当社がハードウェア代金、サービス提供料として対価が発生する。 当社とユーザーの関係性としては、当社がユーザーに対しシステム一式の提供を行う対価とし

【図 5】本プロジェクトにおける開発予定範囲

【図 6】本プロジェクトで実際に使用したシステム概要

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て、システムイニシャルコスト、通信費、及びシステム使用料が課される。 また、ユーザーは本システムを利用して得られたデータを、必要とするゼネコン、施工者、発

注者などのエンドユーザーに対し、外販する事ができる。その際は当社に対しての対価は発生し

ない。ただし、エンドユーザーが、様々な所で得られた膨大なデータを自社独自で解析する等の

目的で、ビッグデータとして購入を希望した場合は、その匿名性を確保した上で、当社から直接

販売する事もある。 本システムを全国展開するにあたり、各地域に取付代理店として、サービス拠点を設置し、ユ

ーザーに対し、迅速なサポートが可能な体制を構築するための拠点とする。機材、サービスの提

供に関しては当社とユーザーの直接決済となり、取付代理店は、サービス提供料として対価を当

社に請求する。

取付代理店の展開においては、実装経験を活かし、今回の実験導入工場 5 社を各地の取付代理

店とする事で、国内の販売網構築の礎として全国展開が容易になる事などを見込んでいる。また

この取付代理店ビジネスが、各工場の経営向上の一助となる事も目的としている。以下【図 8】に販売網構築案を示す。

【図 7】ビジネスモデルと価格設定

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・3.3検証内容と実績・結果

本システムのもたらす効果を正確に把握する為に、【表 1】【表 2】に示した 3 つの検証内容、

目標を設定し、表右側に記載した実績と結果、および詳細・評価を得る事が出来た。

【表 1】検証内容と実績・結果

【図 8】販売網構築案

検証内容 目標 実績・結果 達成度

①Probe+TrackIt(海外向けモデル)の完成と、日本向け仕様変更(国内法規対応・日本語化・国内ユーザー要望対応):システムの完成

①Probe部分の完成と国内導入 △:目標の半分を達成

②測定精度検証:旧型同等以上

②測定精度検証:旧型同等以上を確保

〇:目標を達成

③堅牢性検証(故障事例等のフィードバック):初期不良の改善

③堅牢性検証(故障事例等のフィードバック):初期不良はすべて改善した。

〇:目標を達成

①各生コン事業者コスト削減:コスト削減(人件費)5%(拘束時間に対し、比較対象の相対業務時間が、何%減らせたか)

①コスト削減結果:配車部門において平均3.3%(年間169602円)の業務時間削減の実績:技術部門において、推定平均20.6%(年間1024878円)の業務時間削減推定:合わせて、12.1%(年間119万4480円)が削減可能

〇:目標を達成

②生コンPL保険割引率策定に向けた導入効果の実証:潜在的エラー発生率の測定:潜在的エラー品の処理費用検証:納入事故発生率50%削減

②生コンPL保険割引率策定に向けた導入効果の実証:潜在的エラー発生率の測定:平均9.8%発生(348.3㎥):削減可能な費用:平均(年間1770万円):納入事故推定削減率85%

〇:目標を達成

③付加価値の販売実績の検証(エンドユーザーに対するデータ等販売と、販売実績の検証):納入実数1件以上

③付加価値の販売実績の検証(エンドユーザーに対するデータ等販売と、販売実績の検証):納入実数1件 (レンタル事業として)

〇:目標を達成

①取付代理店設立:5社設立

①取付代理店設立:5社設立

〇:目標を達成

②当社からユーザー間の適正なハードウエア販売価格・システム使用料の確定:ハードウエア販売価格63.5万円/台(取付費用込):SIM通信費用を含めた1車両あたりの月額費用3300円/月

②当社からユーザー間の適正なハードウエア販売価格・システム使用料の確定:ハードウエア販売価格67.25万円/台(取付費用込) (37500円UP):SIM通信費用を含めた1車両あたりの月額費用3800円/月 (500円UP)

〇:目標をほぼ達成

③ユーザーに対する導入意識調査:実導入や、前向きに検討する企業数の割合が50%超:事業展開した際のマーケティングプランの策定及び数値化できないメリットの顕在化

③ユーザーに対する導入意識調査:実導入や、前向きに検討する企業数の割合が58.3%:事業展開した際のマーケティングプランの策定及び数値化できないメリットの顕在化

〇:目標を達成

1.スマートアジテーターシステム性能、法準拠確認、検証

2.提供価値検証

3.ビジネスモデル検証

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4. 実施内容 この章では、実際に行った検証内容を詳細に述べる。 4.1 実証実験協力工場 今回の検証では、以下【表 3】に示したように、立地、規模、顧客層等が異なる全国 5社の GNN

加盟生コンクリート製造会社を選定し、実証実験を行った。5 社においては、本システムのプロ

トタイプをコンクリートミキサー車 5 台ずつに設置、GPS 車両位置情報等が表示できるシステム

を配車(電話対応者)・製造(オペレータ)・技術(試験担当者)、及び納入(現場担当者)等の担

当部署へ配備し、システムの測定精度の検証を行いながら、コスト削減効果やデータ販売実績等、

どのような具体的なメリットが発生するか検証を行った。

また、機材の取り付けや、保守点検作業、データの活用方法等を実際に各工場の担当者が行う事

で、これら 5社が、今後のシステム販売網の基軸となる、旗艦店化(取付代理店)となる事も目

標とした。

また、5 社の関係者との情報共有には、以下【図 9】にしめした、Facebook のメッセンジャー

機能を活用し、情報共有を出来るだけリアルタイムに行えるよう、心がけた。

4.2 本システムの日本国内での性能、法準拠確認、検証 本システムは【図 10】に示したように、生コンの性状記録装置部分と、車両総合管理システムか

【表 3】実証実験協力工場

【図 9】Facebookメッセンジャー情報共有

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ら構成されている。当時メーカーでは、この二つの部分の統合作業を進めており、これらを輸入

し、テスト使用しながら、日本のユーザー要望を取り入れ、日本法規準拠対策、日本語化、不具

合修正、独自のシステムに改良する事を目標としていた。

車両総合管理システムに関する部分は全く初めて触れる事や、Probe システムも新型に変更さ

れた事もあり、いくつかのステップを踏んで、導入を進めていく必要があった。

作業を次の【表 4】に示した内容に分け、取りまとめた。

まずはシステムを日本国内に導入する為の手順を進めなければならない。

これには取付作業手順や、使用方法の正しい知識を習得する事が不可欠ある事や、電波法等、国

内の法律に則った準拠作業が必須となる。それらが完了した段階で、国内への配備作業を行い、

実際に使用しながら、性能評価をおこないながら、堅牢性や不具合の確認等、初期不良をなくす

ためのフィールドテストを行うという流れを取った。これらを的確に行う事で、今後の市場導入

への道筋となる事も目的とした。

しかしながら、今回 OBC部分の電波法認証作業の遅延により、(1),④に示した、日本向け対応に

関するフィードバックを得るには至らなかった為、この部分以外の活動内容として、以下、過程

毎に詳細を取りまとめた。

【図 10】本システムの構成図

【表 4】検証内容

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(1)Probe+Five Cubits(海外向けモデル)の日本市場導入と、日本向け仕様変更

(国内法規対応・日本語化・国内ユーザー要望対応)

①知識習得

(a)Command Alkon社でのトレーニング受講

当社は旧型の Probeシステムにおいて、充分な知識と理解を持っていたが、車両総合管理シ

ステムに関する部分は全く初めて触れる事や、Probe システム自体も新型に変更された事もあり、

知識の習得が必要であった。IBB 社を買収し、新しくメーカーとなった Command 社は、これらの

特許をすべて移行管理しており、動態管理システムを含めたすべての製品の使用に関しては、シ

ステム利用権の取得という意味合いを含め、定められたトレーニングを受講、認定受諾が必要で

あった。

その為、当社から、担当者をカナダ支社に派遣し、以下の 3点において、トレーニングを受講す

る事となった。

期間:2016年 12 月 20 日~23日

場所:Command Alkon Canada

(ア)システム構成確認

・新しい Probeシステムのプロトタイプ現品確認

・車両総合管理システム現品確認(通信端末(OBC)及び、ソフトウエア)

(イ)操作方法習得

・車両総合管理システム

(ウ)取付作業確認

・新しい Probeシステム

・通信端末(OBC)

(b)日本国内でのプロトタイプ取付テスト

メーカーでのトレーニング受講を踏まえ、実際にその手順が日

本国内の車両に対し適応可能かどうかを判断する為、実験参加工場

の 1社である東伸コーポレーションの協力の元、実装テストを行っ

た。

新型の probe システムは、ドラムへのセンサー部分がモデルチェン

ジしており、この部分を重点的に検証する必要があった。

もし、この時点で取付が難しい事が判明した場合は、メーカ

【写真3】トレーニング受講の様子

【写真4】実装テストの様子

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ーに変更依頼を行わねばならないため、1 台のプロトタイプを先行輸入し、検証結果をメーカー

にフィードバックする事も目的とした。

(c)取付作業手順書の作成

今後の取付代理店の作業従事者向け資料として、取付作業手順書は非常に重要である。

メーカーでは取付手順書は作成しておらず、また、国内独自の取付方法が発見される可能性も有

ったことから、それらを反映した日本向け独自の取付作業手順書を作成する事とした。

②法準拠(OBC部の電波法認証作業)

電波を発する製品を日本国内で使用する場合、電波の利用した際の混信等を防止するため、無

線設備は国の定めた技術基準に適合する必要がある事が電波法により定められている。技術基準

に反する無線設備を用いた無線局(不法パーソナル無線等)の電波利用は不法開設となり、使用

者は法的な問題が発生してしまう。

本システムでは、Probe部分と、車両管理システム部分の OBC(on board computer)がこれに該

当する。

Probe 部分は日本国内向けの認証取得済みの基盤を使用している事から、問題は発生しなかっ

たが、OBC は日本での使用を前提としていなかったため、新たに日本向けの認証を取得する必要

があった。これらをクリアする為に、大きく分け、次の2つの方法が考えらえた。

(a)新しい OBCを開発する。

メリット:国内認証取得済み基盤を使用できるため、電波法認証のハードルが下がる

デメリット:新規開発に対する期間、費用

(b)既存の OBC を使用する。

メリット:費用、時間の抑制が可能

デメリット:チップやモジュール、システムのサプライヤーの協力が不可欠、かつ難易度

が高い

メーカーとの協議の結果、時間抑制を 1番重要なタスクという事で意見一致し、(b)の選択肢で

ある、既存の OBC を使用し、電波法認証作業を進める事となった。

また、認証機関は費用や、認証詳細に対する齟齬が少なくなるだろうという思惑から、日本国内

の機関を使用し、認証作業を進める事となった。

一般的に、電波法は専門的な知識を要し、理解に難しい部分がある。当社の選択の理由への理解

への補助として、ここで電波法認証の基礎的な部分を説明する。

*基礎知識 電波法認証とは

国の定めた技術基準に適合する為には、一般的には使用する機器に対して、「技術基準適合証明・

工事設計認証」や、「基準認証制度」認証等を取得し、いわゆる「技適マーク」を表示する必要が

ある。これら認証の申請、受験作業は、総務大臣の登録を受けた登録証明機関のみが行うことが

できるが、申請者は、受けようとする機材の詳細な内部図面や、現品の提示、テストモード電波

の受発信作業等、専門的な知識と技術が不可欠であり、つまるところ、通信機器のサプライヤー

等の協力がないと、申請すら難しいのが現状である。

*技適と設計認証との違い

技適(技術適合認証)は 1台 1台のテストで、テストを受けた機材だけに発行される許可

設計認証は、申請する時に示した設計図等に基づいて製造された機材に発行される許可

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(基盤だけ、チップだけ、機材全部と色々なステータスで認証取得が可能。)

*電波法の種類

Tマーク 端末機器の技術基準適合認定及び設計認証

既存のネットワーク(3G.4G.有線)につながる機器が受けなければいけない認証

Rマーク 無線設備の技術基準適合証明及び工事設計認証

電波(Wi-Fi,BlueTooth.,3G,4G,ラジコン etc)を発する機器が受ける必要有

OBC に求められる機能のうち、セルラーモジュール、Wi-Fi・Bluetooth モジュールがすでに T/R

マークを取得していた場合は、OBC として新たに認証を受ける必要はない。(但し同じ製品でも、

申請者が異なる(流通経路が異なる)場合は、認証されていない機器となる。判断はモジュール

表面に技適マークが記載されているか否か)

*申請者と、メーカーの関係 (設計認証において)

申請者とは、製造者が作った認証を受ける機材に対し、「試験を受けた機材そのままで作られる事

を証明でき、保証する(検査報告が出来る)」 権利(独占販売権)と義務(検査報告)を有する

者であるという定義がある。

よって、メーカー、サプライヤー、販売者等、だれでも申請可能。

*認証を受けられる機関

TELEC等の国内認証機関 20 社

外国の提携登録外国適合性評価機関 13社

③システム配備

国内 5社への取付け

取付代理店設立の一環として、実際に各工場に赴き、OJT 形式で担当者に指導を行いながら、各

社保有車両において、システム 5台ずつの取付作業、及び設定作業を行った。

詳細は、後術する 4.4 ビジネスモデル検証(1)取付代理店設立④システム取付作業、保守点検作

業の教育、習得 OJTの記載を参照の事。

(2)測定精度検証

①スランプ値とは

生コンの性状の測定方法として、世界中広く一般的に行われて

いる手法は、スランプ試験と呼ばれるものである。これは、凝

固前の生コンの流動性を測定する方法で、コンクリート打設作

業の難易と効率、ワーカビリティー(workability) を調べる事

を目的としていて、測定値が大きくなるほど、流動性の高い(柔

らかい)事を表す。実際の試験の様子を【図 11】に示す。*図

はウィキペディアより引用

コンクリート構造物の品質確保において、単位量あたりの水

の量は非常に重要で、必要以上に水を添加すると、強度が急激

に低下する事が知られている。この値を単位水量と呼ぶが、コ

ンクリートのスランプ値は単位水量と密接に関係しており、ス

ランプの変動を詳細に管理、記録する事が出来れば、高い

品質管理能力があると言い換える事ができる。

これまで、スランプ試験は人の手によるランダムサンプリング方式を取らざるを得ず、別途、単

【図 11】スランプ試験の方法

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位水量を測定できる方法が用いられるなど、様々な方法が考えられてきた。

しかし、スランプ値を常時監視、記録できる本システムを用いれば、単位水量測定装置と同等の

重要な指標を管理していると言え、もたらされる効果は非常に大きいと考えられる。

②本システムの測定精度検証の必要性

本システムの測定した値の精度が高くなければ、代替測定方法としては意味をなさない。当社は、

旧型プローブシステムを日本に導入した当初から、測定精度検証を繰り返し行ってきており、そ

の精度は、人の手による測定方法と同程度以上の偏差にあり、充分実用に耐えるという結果を得

ている。

一方、新型となったシステムは、測定方法等に大きな変更はないものの、メーカーにおいいても

充分な測定精度検証結果を得られていなかった。

そこで、国内5社の実験協力工場の協力の下、人の手による実測スランプ値と、本システムの計

測したスランプ推定値との偏差を調査し、旧型で得られたデータと比較した結果、同程度の測定

精度である事を目標としてデータを収集した。

③各社からのデータ提出方法

各社において、人の手による測定が行われた際に、本システムに表示されたスランプ値、及び温

度計測値を記録する手法を取った。【表 5】に示した、データ記録表を用い、データのばらつき要

因も把握する場合がある為、日時、車両番号、生コンの配合設計値、採取場所も同時に記録した。

④データ取りまとめ方法(スランプと温度計測値)

各社より提出されたデータを取りまとめ、以下2点の確認作業を行った。

・工場間の測定差比較検証

会社毎にどういった測定傾向があるかの比較検証。測定精度にばらつきがあった場合、何に

起因したものかを検証する事で、測定したデータの信憑性が確認できる。

・旧型との測定精度比較検証

各社から得られたデータを1つに取りまとめ、旧型で得られた実証データと比較検討

する。この結果が旧型と同等以上であれば、補正などが必要無い事が証明できる。

【表 5】データ記録表

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(3)堅牢性検証(故障事例等のフィードバック)

本システムは、新型になったばかりであり、メーカーとしても充分なフィールドテストを行って

おらず、初期不良や、耐久性等、ハードウェアとしての堅牢性を確認し、不具合修正等の対策行

う必要があった。

もし問題が残ったまま、市場に展開してしまうと、信頼性を損なうだけでなく、その対策に忙殺

され、事業化もままならない。

そこで、国内 5社に配備した本システムを使用中に発生した、故障や不具合の報告を取りまとめ、

メーカーにフィードバックする事で、期間中に初期不良対策を完了する事を目標に、情報収集と、

対策を行った。

4.3 提供価値の検証 本システムにより提供される価値は、大きく次の 2つに分類される。

・GPS動態管理による、車両の位置情報のリアルタイム表示

・生コン性状、ドラム作動状態等の車両に関するデータの取得

この提供価値を活用する事で、製造工場ではコスト削減、品質向上が見込まれ、またエンドユー

ザーへも様々な価値が提供できる事が想定された。そこでそれら効果を明確に検証できるよう、

人件費(コスト)削減、品質向上、売上向上に関する 3点の検証項目を設定し、検証活動を行っ

た。以下詳細を述べる。

【図 12】旧型 Probeシステムの計測結果分析表

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(1)生コン事業者コスト削減

人件費を抑制する為には、業務負担の軽減化や、対応時間の短縮等が必要である。

これら効果を数値化する為には、本システムの導入前後で実際にどれくらいの作業時間が軽減さ

れたかを示せればよい。

まず、当社は、生コン事業者の業務を細分化し、本システムを導入する事で、生ずる提供価値

から得られる効果を次のように予測した。

①配車・出荷業務(顧客からの電話対応をする部署も含む)

a. GPS を使用した車両現在地の取得

配備車両の削減(渋滞情報の把握・積込み順番の把握・的確な配車業務への寄与)

関係先(納入先・運転手・顧客等)との連絡業務の時間削減

b. 生コン、ドラム状態の把握(納入トラブルの事前把握)

②製造業務(オペレータ)

a. GPS を使用した車両現在地の取得

納入までの時間確認(経時変化予測)による、製造調整

b. 生コン状態の把握

先行車両の経時変化を納入前に把握する事で、これから製造する生コンへのフィードバック(不

良品発生率の低減・それに対する作業時間削減・廃棄物処理費削減)

③品質技術業務(試験・テスト)

a. GPS を使用した車両現在地の取得

納入までの時間確認(経時変化予測)による、製造調整

現場納入品確認に赴く回数の削減(リアルタイム情報の取得)

b. 生コン、ドラム状態の把握

経時変化データ(ビッグデータ)を利用した、配合設計変更へのフィードバック

サンプリング作業の代替(作業時間軽減)全量確認の可能性

事故品発生率の低下(規格外品の納入数量の把握と削減対策、及び、効果測定)

④ドライバー業務

a. GPS を使用した車両現在地の取得

他の車両の位置情報把握による、納品精度の向上

無線、電話等による、関係先(納入先・運転手・顧客等)との連絡業務の時間削減

b. 生コン状態の把握

ドラムの回転状況が記録される事から、運搬中、荷卸し中の規則(加水、撹拌、逆転による荷こ

ぼし)や納入事故防止へのアラート情報共有(品質向上、作業工程管理)

不良品の納入前検出(対応時間の削減・廃棄物削減)

これらの業務において、人件費抑制、すなわち、作業時間の短縮等の効果を検証する為、実験導

入工場毎に日々の業務内容(対応時間等)を【表 6】に示したデータシートに記入、報告された

ものを【表 7】のように月次で取りまとめ、分析に使用した。

しかしながら、期中に OBC の電波法認証の遅延問題が発生した為、、国内既存の GPSシステムと、

Probe システムを並行的に使用した、疑似的スマートアジテーターシステムを使用した限定的な

検証を行わざるを得なくなった。そこで、効果が明確にわかる、①の配車・出荷業務部門の検証、

及び、③の技術品質管理部門の業務内容別の対応時間データ収集に特化して、検証を継続した。

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(2)生コン PL保険割引率策定に向けた導入効果の実証(潜在的エラー発生率の測定と改善効果

の検証:納入事故発生率 50%削減)

自動車保険では、エアバックや、イモビライザー等が装着された車両や、ゴールド免許等、一定

【表 6】週次データ記録シート

【表 7】月次データ記録シート

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の条件があると、保険料が割り引かれるというオプションが存在する。

当社は、スマートアジテーターシステムの利用を通じて、生コン PL保険料の割引に貢献出来れば、

ユーザーへの提供価値になるのではと考えた。

保険会社によると、保険料を割り引くためには、システムの導入前後の事故発生状況を比較し

た結果、事故発生頻度が明らかに下がったと認められれば保険料の割引を検討できるという。た

だし、そのシステムが一般的に広く認識され、かつ一定数以上普及していることが条件となる。

生コン PL保険の設計の観点で言うならば、「システムを導入することにより、どれだけの出荷

トラブル(事故)を防ぐことができたか」が確認できるデータが必要となる。つまり、今回のプ

ロジェクト期間中に、本システムを導入した結果、顕著な事故抑制効果が確認され、かつ、今後

導入台数が拡大し、改善傾向がさらにはっきりと示されたと客観的に確認された時に、初めて保

険料料率設定検討の段階に入るという事である。

そのためには、その改善効果を明確に測定、記録する事が非常に重要な要素となるが、現在の

納入試験方法は、納入全数量の中から、一定の頻度でピックアップサンプリングしたものを、人

の手によって測定するものであり、測定者による結果のばらつきや、恣意的な作為が排除できな

い。事業者のコスト管理力や、施工期間のひっ迫、納入管理の限界等、様々な業界の現状の要件

から、納入不良(事故)発生数は意図して低くなる方向へと進む事は容易に想像できる。その為、

これをもって、真の事故発生率だと捉える事は、いささか疑問が残る。また、今後 i-construction

等の普及により、全量検査等が義務化された場合、今まで意図せずにすり抜けていた納入不良品

分が処理費用として計上される事になり、経営を圧迫しかねない事態となる可能性が否定できな

い。

そこで、今回の検証では 4.2(2)測定精度検証を目的に得られた実測値と、本システムでのス

ランプ測定値、及び納入品の規定値と共に比較検証する事で、「真」の事故発生率を捉える事にし

た。問題のある納入事例ごとに、恣意的なものか、本当に品質的に問題があったものかをスクリ

ーニングし、本システムの提供価値で、品質改善可能な件数を導き出し、それらを推定改善率と

して、算出する手法で検証を行った。

以下、【表 8】に示したように、会社毎の真のエラー納入品の割合が把握出来れば、保険割引率

算定の根拠となるばかりでなく、年間推定削減コストも算出でき、システムを導入した際の、よ

り実態に即した効果測定が可能となる事を検証目標とした。

(3)エンドユーザーに対するデータ等販売と、販売実績の検証

本システムから得られる様々な提供価値は、生コン事業者だけでなく、エンドユーザーに取っ

ても価値があると推測したが、実際に導入されるだけの魅力あるシステムであるかどうかを検証

【表 8】エラー発生数量とりまとめ元表

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する必要があった。そこで、まず、エンドユーザーである共同実験研究会参加ゼネコン社、およ

び中小地場ゼネコン社による提供価値試算を行い、提供価値の販売形態や、活用方法、金額を確

定させた。 その結果を用いて、実際に各実験工場にて、エンドユーザーへの販売活動を行い、実績を検証

した。

①共同実験研究会との出会い

我々は 2014 年、Probe システムの国内販売に際し、測定機器としての精度やシステム検証を目

的として、参画 5社とゼネコン 10社とで、共同実験研究会を立ち上げた。

これまでに、研究成果として 2015年度から 2017年度にかけ、毎年建築、土木両学会での論文発

表を行いながら、本システムの有用性を広く伝えてきた経過がある。

本システムの基幹部分である Probe 部分は、生コンクリートの測定装置であり、いくら技術と

して感銘を受けたと言っても、その測定する値が信頼に値する物なのか、また、どういった特徴

があり、どうすれば有用に運用できるのかを日本国内で実際に検証する必要があった。また、測

定装置として、公的に認められなければ、その価値は半減してしまう事は否めない事実である。

しかしながら、我々は中小企業の生コン生産事業者を母体とした企業であり、こうした装置に

対する評価知見の具体的なノウハウを持ちあわせていなかった。

そこで、GNN メンバー社と交流があった、ゼネコン数十社の技術者で組織された共同研究フォー

ラムに打診をしたところ、10社から、共同実験研究会の立ち上げに協力いただける事になったの

がそもそもの始まりである。

本システムは、我々製造者のみならず、施工者、発注者にもメリットを享受できる。

我々は、いわばエンドユーザーの声を直に聞く事で、技術的な裏付け、確立と、周知を相互に

かつ短期間に行えるメリットがある。一方ゼネコン社にとっても、物件確保の一助となりうるよ

うな新しい技術提案案件を常に探求しており、相互に魅力ある機材であったと言える。

②システムの価値と VE提案

実際ゼネコン社はどのように「新技術」を使用するのか。

その使用方法とは、『VE提案』技術提案への採用である。

土木、建築物件を問わず、発注者から出されたほとんどの建設案件は、入札制度を利用する。結

果、発注者は費用を押さえつつ、最良の結果が得られるわけであるが、然るに価格のみにフォー

カスされがちで、(これが悪評高い「談合」が発生する一要因にもなったわけであるが、)過度な

コストダウンを行った結果、施工不良や、工期延長等、技術的な問題が散見された。

この問題は公共事業でも表面化し、大問題となった。その現状を打開するべく、平成 17年に「公

共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)」が施行されるに至る。

品確法の特徴とは、「総合評価落札方式」が取り入れられている事である。工事価格だけでなく、

公共構造物の品質確保・向上など技術提案を求め、それを加点項目として設定する事で、落札者

が選定されるシステムである。

技術提案には安全や環境など対象工事の特徴などにより、その課題は様々に設定されるが、構

造物の品質確保・向上を求められることが多い。

VE 提案の VE とは、(Value Engineering)の略で、製品やサービスの価値(V)を、それが果たす

べき機能(F)と要するコスト(C)との関係式、V=F/Cで表し、価値(V)のアップを図る手法と定義さ

れている。機能や品質を維持したままコストを下げる、コストを上げずに機能を向上する、とい

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った考えに基づいて、工程(開発、設計、製造、購買など)での具体的な改善や代替案を提案する

ことである。(引用:Weblio辞書)

コンクリート構造物の品質確保についても、強度、耐久性に関してコンクリート配合上、影響

が大きい単位水量の測定が義務付けられ、品質管理項目に加えられた。コンクリートの施工性性

状を表すスランプ(スランプフロー)は単位水量と密接に関係しており、単位水量の変動はスラ

ンプの変動を伴う。本システムは出荷時から現場到着時までのスランプを高い精度で計測管理す

る事を目的としており、ひいては、コンクリートの強度、耐久性に大きく影響する単位水量と同

等の重要な指標を管理していると言え、実際の技術提案案件では、単位水量の測定管理に関して

対象コンクリートを全量検査できるような機器を VE提案する事例が多くなっている。つまり、本

システムのような、品質やサービスの価値をより向上させる技術はまさに

VE提案にうってつけと判断されたと言ってよい。

③施工者の考える提供価値

ゼネコン社へのアンケート

施工者の考えるシステムの提供価値、妥当な金額を詳細に把握する為、共同研究会に所属する

大手、準大手ゼネコン 10社へのアンケートを実施した。

アンケートは、以下の内容を提示し、提供価値を細分化し、受諾に値する金額設定予想値を導

き出す事を目的とした。2017 年 1月からの 1ヶ月間をもちいて、書面で提出、回答を取りまとめ

た。

以下、【図 13】にアンケート質問内容を取りまとめた。

Probe system 共同実験研究会メンバーによる、

エンドユーザーにおけるプローブデータの活用方法 ~~データ購入に関する価格シミュレーションアンケート~~

1・予想される価値と問題点

システムから得らえると予想される様々な価値(有効性)を次の 3 つのカテゴリーで予想し、問題点を記載 (1)「品質向上面(Q)」 (2)「コスト削減面(C)」 (3)「工数削減・納期短縮面(D)」

2・システム提供予定のサービスに対する施工者として必要な機能要望

(1)リアルタイムでの車両位置情報、生コン状態の情報 (実際の納入や現場管理に使用)

(2)得られたログデータの提供(現場の工程管理・納入先へのデータ提示用として) (3)研究用データとしての提供(ビックデータの活用) (4)機材レンタル(技術提案等での使用を想定)

3・提供されるサービスへの適正な値段設定(サービス対価の試算)

(1)建設現場向け ①廃棄物削減に対する価値(残コン・戻りコンの処理費用)

②納入試験を省略できる分の人件費 (全量納入試験等、通常の納入試験以上の管理義務が発生した場合等)

③納入数量に関する取りまとめデータの提供 ④物件確保(技術提案)に使用する際の使用料(レンタル等)

【図 13】アンケート質問内容

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④各社の動きと提案案件への使用とレンタルビジネスの立ち上げ 当初、年数回、全社共通の共同実験を行っていたが、それと並行し、各々で実験使用する等、

ゼネコン社個別の活動が徐々に見受けられるようになった。これらは基礎データの裏付けとして

行われ、社内の技術発表や、土木、建築学会等での論文発表というアウトプットを目的としてい

るものが多かった。

その後、徐々に実際の受注予定の施工現場において、本システムを技術提案として使用する動

きが数社から出てきた。そこで問題となったのが、本システムの配備状況である。

当時、本システムはあくまでも実験的な位置づけで、全国で約 5社の生コン製造者が購入、設

置していたに過ぎなかった。その為、ゼネコン社からは提案技術として使用したいが、現場の近

隣生コン工場への取付が出来ないかという相談を受けるようになる。

生コンには JISの規格上、90分以内に収めなければならず、必然的に建設現場の近隣の生コン

工場が供給工場として選定される。しかし、生コン製造者には日本独自の共販制度が存在し、施

工者が特定の生コン工場を独自に選定出来ない可能性が高いという問題がある。また、施工現場

近隣に、協力的な GNNメンバー社が存在しない可能性も高く、本システムを広く使用する為には、

生コン製造者がシステムを購入する以外の方法を構築する必要が出てきた。

それまで我々は、本システムは、生コン生産者自身が品質改善に必要とするもので、生コン生

産者が「購入」、「設置」するものであるという認識しかなかった。

そこで、当初は施工者に本システムを購入してもらい、施工者自ら運用管理利用する方法を考

えたのだが、本システムの特性上、生コン事業者が保有する車両に取り付ける必要があり、施工

者が取付交渉、取付け、取外し、日々のメンテナンス等の手間を考えたとき、導入をためらう事

が予想された。

一方、生コン事業者の根強い抵抗感を感じていた事も否めない事実であった。

今まで、ある意味ブラックボックスであった部分をすべて施工者に明かす事になり、彼らは不

良品納入可否の判断として利用される恐れを危惧したのである。

施工者からの一方的な取付け依頼では、生産者自身へのメリットが全くないという誤ったマイ

ナスイメージで捉えられる恐れがあった。そもそも、GNNMJの発足当初からの大きな目的である、

扱う商材は「生コン事業者にとっての武器」足る必要性があり、単に施工者側のメリットだけが

目的に使用される事だけは避けたいという我々の想いもあった。

社内会議を続けるうちに、こうしたシステムを広く普及させていくためには、施工者、生産者、

発注者の相互メリットが絶対に必要という結論に至った。解決策を模索するうち、我々は、施工

者と取り決めた期間内だけ、近隣生コン工場に本システムを設置する事で、データを取得、提供

できるような、レンタルシステムを考案した。

施工者としては、データが得られればよく、手間はかけたくない。また、生産者としても、必

要以外のデータを開示したくなく、手間はかけたくない。その間に立って、すべてを請け負うス

タイルであれば、「三方良し」なのではないかという結論であった。

我々は、次のような生コン性状データ記録提供システムレンタル事業として、提案を開始した。

a)取付~メンテナンス~取外しまですべての一連作業請負

b)アウトプットデータ提供(2種類) リアルタイム情報:表示部の瞬間値表示

ロギングデータ:CSVとして提供

c)使用時の立会い

d)月額使用料制 (台数、期間によって料金加算)

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ポイント:施工者からの依頼を受け、システムの取付、データ取得、データ提供、メンテ

ナンス、取外しまでの一連作業をパッケージング化したものを提供し、データ

の提供料金として、施工者から対価を得る。

:我々は施工者からの依頼で、情報システムを取付けるという立場である為、取

付工場への折衝等、重要な部分のみ施工者自身で行い、その後の運用はすべて

GNNMJに委託。

⑤地場の公共土木工事を中心に受注する中小建設会社との意見交換会開催

我々の想定するエンドユーザーは大手、準大手だけではなく、地場に根差した施工者も当然該

当する。彼らの意見を集約する事で、より詳細な現場の声を収集する事が出来ると考えた。

そこで、我々の属する GNN(元気な生コンネットワーク)と積極的に意見交換、交流会を行っ

ている、YDN(やんちゃな土木ネットワーク)という、全国の中小土木施工会社の任意団体から 2

名、ポンプ圧送事業者等、関連企業 2社の 4名と共に 2017年 2月に意見交換会を開催した。

中小の施工会社の置かれた状況を理解する事が、彼らがどのようなデータ、システムを欲して

いるか、どこに価値を見出す事が出来るかの理解に直結する。

ここでは、i-construction と現場対応を中心に、説明する。

⑥YDNが推進する、i-constructionとは

「ICT の全面的な活用(ICT 土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産シス

テム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す取組である i-Construction(アイ・コ

ンストラクション)というスローガンの下、国土交通省が主体となって、活動を進めている。し

かしながら、現状、これが i-constructionだという完成形はできていない。

そこで、国交省では i-construction推進コンソーシアムを創設し、広く普及を進めるべく、多方

面からの情報収集、(様々な分野の産学官が連携して)をおこない、IoT・人工知能(AI)などの

革新的な技術の現場導入や、3次元データの活用などを進めようとしている。

YDN もこの活動に積極的に参加しており、実務でここまでの内容で活用している中小企業は国

内に見当たらなく、新聞社、国交省から取材が多数来ている状況である。

⑦土木の現場の作業工程と i-constructionの効果

スマートアジテーターが提供するデータとの関係を示す前に、実際の土木工事の施工過程を以

下に示しながら、i-construction 技術を導入する事で、どういった効果があるかを説明する。

a)測量 (着工前の現状の3D化)

現状人力でやっている。これが、IoT 対応の機材(測量器・ドローン等)を使う事でたとえ

ば、5日位かかっていた測量が、半日で終了する。

b)設計 (データの3D化)

現場亜測量データを起こし直し、2Dで図面を描く。これらが自動的にデータ連動するので測

量データがそのまま移行でき、しかも3Dで設計でき、測量データ上にレイヤー表示が出来る

ので、細かな修正が事前に可能。

c)施工 (半自動の施工(建設機械の半自動運転))

設計データを建設機械に送る事で、経験の浅いオペレータでも、半自動で施工可能。精度が格

段に良くなる。

e)完成検査 (出来型の計測)

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現状再度測量する、または図面で多大なチェック項目をおこなうが、測量、計測のスピードが

格段に向上する。

f)納品

すべての資料が電子データ化で来ているため、取りまとめが早い。(電子データ納品が OK)

以上に示したように、土木の現場の現状は「ほとんどが、今だにアナログ・しかも誤差が大き

いという事実」が良くお分かりいただけると思う。

⑧i-construction普及への問題点。

施工者では、「i-con をやっても儲からない」という声が聞こえる。

理由は明白で、わからない、しらない、PCアレルギー等の理由で、すべての i-con化のタスクを

外注している事に起因している。上記の1~5の i-con化を自社内でやっていれば、当然、人件

費、工期の短縮効果は絶大である。

大手ゼネコンもセクション毎に「下請け」化し、しわ寄せをすべて下請けに回している事から、

ゼネコンが推し進めても、下請け企業はやりたくないという現実がある。

中小建設会社へのつまり、i-con 化は、測量、施工、管理まで一括で行う、中小の地場土木専

業施工者にこそ、一番効果が期待できるのである。

また、現状、i-con の完成形が無く、今まさに広がり始めたばかりである事から、誤解認識が広

がっている事が多い。逆にこの価値に気づいて実行できる施工者にチャンス到来との認識がある

事も事実である。

⑨ポンプ業と i-constructionとのリンク(施工者の本音)

現場での生コン打設業の管理は、施工監督者が行うものであるが、実際の施工現場の最前線で

は、配筋工、型枠工、打設業者(ポンプ圧送業者)等、下請け作業者が専門職として、作業を行

っている。

打設のノウハウを持った管理者がいれば、より具体的な内容について協議をする事もあるが、

そうした監督者、管理者が減少の一途をたどっていると言わざるを得ない。

結果、コンクリート打設の出来不出来は、圧送業者等にゆだねられる事も多く、「あとはお任せ

で」と言われる事すらある。生コンの打設で困るのが、「次の車が来ない事」である。打継ぎに時

間がかかると、「コールドジョイント」と呼ばれる施工不良が発生する。それを防ぐためには、連

続した作業が欠かせない。配車状況が確認できれば、作業の進め方が非常にスムーズになる。ま

た、どういった性状の生コンかが事前に把握する事が出来れば、配管内が閉塞する事例を減らす

事も出来、安全面でも非常に有用である。これらの前日に議題の整理をし、以下の【図 14】の内

容にて、結果を取りまとめた。

YDN メンバーによる エンドユーザーにおけるプローブデータの活用方法

~~提供価値に関する調査(意見交換会)~~

1・IPA事業説明 2・スマートアジテーター構想の概念説明(予想提供価値)

3・YDNが推進する、i-construction概要説明 4・スマートアジテーターと i-constructionとのリンク(何に価値を求めるか) 5・ポンプ業と i-constructionとのリンク(施工者の本音)

6・製造者から施工者までが一体となった、我々の欲する生コン総合管理システムとは?

【図 14】意見交換会議題

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4.4 ビジネスモデル検証 (1)取付代理店設立

本システムを使用する為には、取付作業は元より、故障対応や、保守点検作業等、ユーザー工

場に赴いての実務作業が必須である。

また、全国展開するにあたり、迅速なサポート体制を構築する事が必要不可欠だが、これを

GNNMJ単体で行う事は、費用面や人員確保等を考えた時に、課題が多く、現実的ではなかった。

一方、本システムはミキサー車という特殊な車両に取付なければならない事や、溶接作業等の

能力が必要で、かつ生コンに対する知識も重要となる。例えば自動車整備ディーラー等と代理店

契約等業務委託した場合、その知識の取得だけでも非常に手間がかかり、代理店設立への足かせ

となる。そこで、今回の実験導入工場 5 社による実装経験を活かし、5 社を各地の取付代理店と

する事で、全国販売網構築の礎として生かせられないかとの発想に至った。

生コン製造事業者であれば、生コンに対する知識は勿論のこと、車両整備や、溶接作業にも長

けた人材が多い。これらの技能を生かす事が出来れば、生コン販売以外の全く新しい収入源とし

て確立出来る事になり、IoT 技術を用いたビジネスモデル構築が出来る先例となりうる事にも注

目し、計画を実行した。

取付代理店として認定する為には、それらの作業に従事できる人材や、機材設備を整備し、シス

テムに対する正しい理解と、取付保守作業の実務経験が必須となる。それらを一定レベルで保有

した会社にのみ、取付代理店として認定をおこなうという制度を確立しておけば、今後代理店を

増やす場合においても、平等な評価が行え、比較的簡便に代理店を増やす事が可能となる。

そこで、取付代理店として認定する際に必要なプロセス等を次の①~⑥で抽出し、各社を認定取付

代理店として選出できるかの検証を行った。

①選任者の選出

作業に従事できる人材が確保できているかを確認する為に、必要と考えらえる部門別に選任、

報告を依頼した。以下、【表 9】に示した部門毎に、選任者を選出し提出させた。

みつわ社 東伸社 金沢社 泰慶社 野方社

担当項目

【事業統括責任者】

【取付整備担当者】

【PC等ITインフラ担当者】

【交換部品等、物品管理者】

【会計担当者】

担当者名

【表 9】担当者選出確認表

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②保守運用体制整備

整備取付に必要な工具、機材がそろっているかの確認をする為に以下【表 10】確認表を作成し、

報告を依頼した。

③取付マニュアル・作業標準の作成

東伸コーポレーション社で行った、プロトタイプの取付作業を元に、国内の車両に適応したシ

ステム取付作業マニュアル【図 15】を作成した。

必要な作業工具 〇・×

・10㎜、12㎜、19㎜ メガネレンチ・ソケットレンチ

・六角レンチ5㎜ 6㎜

・+#2スクリュードライバー

・メジャー・油性ペン・錆止め塗料・コーキング材・マスキング材

・サンダー 又は ガス溶断機

・溶接機 ・ステンレス対異材溶接向けの溶接棒

・溶接スパッタ防止布

・ワイヤーブラシ(塗装焼け処理用)

・防護用具(保護メガネ・手袋・保護服・安全靴・ヘルメット・安全帯)

【表 10】保守運用品確認表

【図 15】システム取付マニュアル

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④システム取付作業、保守点検作業の教育、習得 OJT

実際に各工場に赴き、OJT 形式で担当者に指導を行いながら、各社保有車両において、本シス

テム 5台ずつの取付作業、及び設定作業を行った

会社名 取付日 設定日

㈲ミツワ生コン 4/14 5/9

㈱東伸コーポレーション 4/29 5/30

金沢生コンクリート㈱ 4/19 5/23

㈱泰慶 4/9 5/15

野方菱光㈱ 4/4 5/18

各社での対応内容、発生した問題等は、【図 16】に示した例のように、取付・設定作業報告書と

して取りまとめた。

【表 11】各社対応日時

【図 16】取付・設定作業報告書

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⑤作業習熟度確認(認定)

各社が、認定取付代理店として求められるレベルにあるのかを判断する基準【表 12】を作成し

た。作業に立会った状況や、故障対応等の結果から、各社の適正度、作業習熟度の確認を行った

その際、問題があると判断した箇所は、再度指導を行った。

⑥取付代理店契約締結

⑤において、総合評価が 4以上の会社を正規の取付代理店としてのレベルにあるとし、各社に取

付代理店として契約する意思があるかを確認した。

意思がある会社とは正式に契約書を交わす事で、全国網として構築できるかの検証を行った。、

(2)当社からユーザー間の適正なハードウェア販売価格・システム使用料の確定

ユーザーが本システムを導入する事で、金銭的なメリットを生まなければ、普及の大きな阻害要

因となる。システムのイニシャルコストやランニングコストを極力抑える必要がある一方、当社

が利益追求を目的としないというスタンスであるとしても、再投資可能な収益の確保は重要であ

る。その為、相互にとって最適な価格設定は最重要課題であり、様々な条件を考慮した価格設定

が必要不可欠であると考える。

そこで、まず我々は、当社の利最低限の収益確保を見込んだ本システムの販売予定価格を算出

し、その額で販売した場合、ユーザーの投資対効果にみあうだけの金額となりうるかどうかを確

認し、販売予想価格の仮説を算定した。

次に、実際の実証結果を元に、仮説で算出した販売価格が妥当かどうかの検証を以下に示す項目

毎に行い、最終的な販売予定価格を算出した。

【表 12】作業習熟度確認表

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①仕入れ値の確定

当初、メーカーにおいても、プロトタイプの製造が始まったばかりであり、必要なパーツ構成

は判明していたものの、キットとして実売された実績はまだなかった。

その為、当社にプロトタイプを卸す為に、試算した価格が以下の【表 13】である。(円安を見越

し、120 円/USDと仮定した。)

また、今回新たに携帯回線網を使用して、データをサーバーに格納するシステムを採用したた

め、システムへのアクセス費用や、通信費、利用料といった、課金金額が発生するが、

当初は新型での金額提示がメーカー側の都合で行えなかった為、旧 IBB社と、当社との共同開発

時に提示された金額である、1台当たり 10USD/月・台を使用する事とし、通信に必要な SIMは通

信料に余裕を持たせた、月額 800円/月・台とした。

②取付時の工数(人件費)・その他経費の確定作業

プロトタイプは全くの新型となり、取付工数にどのような変化が起こるかわからなかった。そ

こで、仮説では旧型の 1台に要する取付時間、人工数は、旧型の場合、熟練者 2名で、5台/日程

度という実績を元に、1台当たり、1.6時間×2名*2200 円=7040 円として算出した。

③販売予定価格の確定作業

上記①と②を元に当社の経費その他を見込んだ 1台当たりの原価を【表 14】に示す。

我々のビジネスに対する考え方は、成り立ちからもわかるように、本事業で大きな収益をあげ

る事に重点は置いていない。このシステムを有効に活用するためには、一部の企業や団体にこの

【表 13】仕入れ値試算表

【表 14】原価計算表

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技術を独占される事なく、我々ユーザー自らが検証や普及を推し進める事で今後の一般的な技術

として広く浸透させていく事を目標としており、本システムを広く、安価に広めていく為の適正

な価格設定等を探る事を重要視している。

その為、実質的な必要利益は、継続的な開発にかかる費用、500万円/年程度となる。

この原価を元に、【表 15】では、当社の今後の継続的開発にかかる開発費を生み出せる収益(年

間 500万円を償却できる)を目標利益と設定した場合の適正な本システムの販売設定金額を算出

した。

計画案には、以下の条件を付してある。

(a)月毎の出荷本数による最低価格設定試算

(b)システム耐用年数(5年)な為、再販は計上していない

(c)販売台数に対する、プロパー社員設定数(営業・サービス)

(d)月 45台以下 1名、月 45台~125台2名、月~200台 3名

(e)レンタル、累積台数(月額費用増加分)は除外

(f)修理修繕は除く

【表 15】販売予価設定表

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試算によると、最低販売価格設定は、月別の販売台数により、3台/月で 85万円、4台/月で 75

万円、6.7台/月で 65万円、10.1台/月で 60万円、20.3 台/月で 55万円。最下限が、104台/月で

51万円との結果が示された。

5年後の普及率を 6%と仮定した場合の売り上げ試算表【表 16】を示す。

6%に設定した理由は、全国 3000 社の事業者数のうち、GNNメンバー社が約 100社あり、この全社

への普及+α、ゼネコン社からのレンタル案件をすべて含むと、その倍に近い、180 社程度への

普及をイメージしたからである。

これによると、年間新規販売が 60社(毎月 5社)となり、算出される年間営業利益も 5000万円を

超過する。ここまでの拡大は十分可能な市場であるが、それには、プラント設備との統合や、改

良が進んだ最終型にまで発展させる必要があると考える。

その為、まずは、下限目標を設定し事業の継続性を高める事を最優先課題として試算した。

この月別予定出荷量に照らし合わせると、月間販売台数は 20台程度が妥当なラインと考えられ、

販売代金としては、70~55 万円/台が現実的な設定金額と考えられた。

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【表 16】売上試算表

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次に月々の利用料設定金額について検証する。本システムの新規販売が全く行われなかった場

合の収入源として確保するならば、月間の費用経費と同等以上のものを確保する必要がある。

その条件で試算をすると、人件費、雑費、メーカーに支払う使用料を加算した必要経費は、5年

後にプロパー社員が 10名まで増加したと仮定した場合には、約 2000万円/月となる。

月額費用加算分を 1000円と仮定した場合は、20000台の設置が必要となるが、【表 17】に示した、

5年後の普及率 30%設定の場合の設置台数試算、10140 台の倍近い値となる事から、加算額は 2000

円とする必要がある、一方、【表 16】に示した 5 年後普及率が 6%の場合の普及台数は、およそ

2000台であり、必要経費は約 500 万円/月が試算される。その場合の必要な設定金額は、2500 円/

月を課金し、2000台から徴収する事でクリアできる。

この試算は新規販売やその他の売り上げ(レンタル・修繕・買換え)を全く想定していない事や、

新規販売で得られた純益を計上していない。これらの値は、実販売数や納入金額等に左右される

ため、安定した収入として見込むには、1500 円/月前後が分岐点になるのではないかと予想され

る。

以上の見地から、ユーザーに課金される月額使用料は、通信費をあわせ、3000 円~4000 円が妥

当ではないかと考えられる。

よって、本システム全体(機材一式、月額コストの合計)の導入価格は、5年後の普及率が6%

とした最少の試算において、1台/年あたり 69~58万円(平均 63.5万円)であれば、利益を生む

ことのできるラインだという結果が導き出された。

最後にこれらの試算結果を元に、継続的な販売体制が構築できるかの検証を行った。

目標損益(下限目標)を示した結果が、【表 17】である。

事業上の必要利益は、継続的な開発にかかる費用であり、500万円/年で十分な開発が可能と考

えられる。また、表 13 の普及率 6%モデルでは、年間新規販売が 60 社(毎月 5 社)前後になり、

算出される年間営業利益も 5000 万円を超過している事から、事業の継続性を高めるという点はク

リアできる設定となっている事が改めて確認できた。

【表 17】目標損益計画案

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④導入会社での投資対策

このような試算結果が、導入ユーザーにとって、費用対効果が認められなければ、広く一般化は

しない。

そこで、4.3提供価値の検証結果を元に、効果との比較検討を【図 18】のように取りまとめた。

但し、システムの開発ステータス等によって、その結果は大きく変わる為、以下の条件を付し

てある。

(a)本システムが完成している状態

(リアルタイム情報が、生産者、施工者等、すべての部門に開示でき、過去情報も遅滞な

く確認できる状況)

(b) 本システムはプラントシステムとは連動していない状態

(c) 本システムによる生コン性状測定方法が、公的に認可され、置換できる状態

結果、業時間の削減や、納入事故の発生率を押さえるという、生産者のコストダウン分を勘案

するだけでも 1年間で充分投資対効果がある。

これに加え、データ販売費や、取付代理業務委託費用等、付加価値販売を加える事が出来れば、

【表 18】投資対効果計画案

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その効果は十分にあるとの試算結果を得られた。

これらの結果を元に、以下 2点のユーザー販売価格を仮説額として決定した。

・ハードウェア販売価格 63.5万円/台(取付費用込)

・SIM通信費用を含めた 1車両あたりの月額費用 3300 円/月

(3)ユーザーに対する導入意識調査(事業展開した際のマーケティングプランの策定及び数

値化できないメリットの顕在化)

①アンケート調査の実施

実際のユーザーがメリットを感じ、本システムの導入に結び付く事が出来なければ、こうした

システムを広く普及する事は難しい。

実際のユーザーたる、生コン事業者がこうした技術をどのように感じ、また、導入したいという

意思の有無を調査する事で、これらを明確化できる可能性がある。

そこで、我々の出身母体である、全国約 100社からなる生コン事業者任意団体、GNN(元気な生

コンネットワーク)の加盟社を活用し、(2)の設定価格検証結果を提示した場合の本システム導入

に関する意識調査を行う事とした。

その際、数値化できない様々なメリット(3K イメージの払拭・離職率の低減化等)が付随的

に発生する事が予想される。実はこうしたポイントが潜在的な訴求力となると考えられ、現状は

未知数である為、こうした観点を明らかにする事も目的とした。

GNN 加盟社は全国に及び、規模や事業形態などが様々である。この加盟社から幅広く意見集約

が出来れば、全国の生コン事業者の動向とのマッチングもスムーズに行えると考え、正確な回答

を得る為に以下の方針を立てた。

(a)回答者(社)の情報を正確に把握する。

回答は匿名性を持たせ、恣意が入らないように配慮する一方、所在地や、規模等、セグメ

ント化が出来るように質問を精査した。

(b)数値化できないメリットの顕在化を図る為、業界の置かれた現状を出来るだけ探れるような

内容を付加した。また、事業に対する積極度に関する調査項目を作成した。これらの方向

性を確認する事で、その事業者が、今後積極的に事業展開していく意思があるかを検証可

能と判断した。

(c)IoT技術等に関する先進的な知識の有無により、導入意欲に変化が生まれるかを確認したい。

以下、行ったアンケートの詳細を【図 17】に示す。

*実際の質問内容の詳細は、別添資料「アンケート質問内容」を参照の事

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②アンケート調査の目標

その結果、導入意思(導入契約や、購入を前向きに検討する等の好意的な意思表示)の割合が

50%以上確保する事が出来れば、5 年後の普及率6%も充分現実的な数字として考えられると判

断し、これを目標とした。

③アンケート結果の精査とマーケティングプランの作成

アンケートによって得られた結果を検証、購入者セグメント分析を行う事でどういった層をタ

ーゲットにした販売促進活動が測れるかを検討した。

生コン製造における IoT技術導入に関するユーザー意識調査

対象:GNN会員社(全国 96社)

時期:2017年 8月 21日~31日

方法:Webアンケート(SurveyMonkey)使用

(会員ダイレクトメール及び、Facebook GNN pageでの告知誘導)

質問内容

回答者(社)情報

[Q1回答者の役職]

[Q2回答事業者の所在地]

[Q3業種]

[Q4月間平均出荷量]

[Q5社員数]

[Q6車両保有台数]

設備や社員に関する質問

[Q7社員の平均年齢]

[Q8社員の過不足感]

[Q9社員募集の有無と結果]

[Q10プラント設備更新予定]

IoT技術に関する質問

[Q11 IoT知識との関連]

[Q12既に導入した IoT機器数との関連]

[Q13 i-Constructionの認知度との関連性]

[Q14 スマートアジテーターの提供価値の優先度]

[Q15 スマートアジテーター等の IoT技術に対する興味度]

[Q16 スマートアジテーター導入意識]

【図 17】アンケート質問内容

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5. プロジェクトの成果 この章では、当初の実施計画書に示した各項目目標と、4 章に示した検証を行った結果を述べ

る。

5.1 スマートアジテーターシステムの日本国内での性能、法準拠確認、検証 (1)Probe+Five Cubits(海外向けモデル)の日本市場導入と、日本向け仕様変更

(国内法規対応・日本語化・国内ユーザー要望対応)

①目標 本システム(国内仕様)の完成

②結果 Probeシステム部分は測定精度、堅牢性検証含め完成

車両総合管理システム部分は OBC電波法認証作業の遅延から国内導入未達

(a)知識習得

(ア)Command Alkon社でのトレーニング受講

(あ)システム構成確認

・新しい Probeシステムのプロトタイプ現品確認

旧型との大きな違いは、Probe と呼ばれるドラムに取り付けられたセンサー部分の設計が大き

く変更された点である。旧型では、センサー部分にバッテリー、PCボードを内蔵し、ソーラーパ

ネルだけを別体としていた。このため、防水性能、ソーラーパネル取付時のドラムへの影響、突

起部の厚さ等に問題があり、改良にも限界があった。

そこで、この部分を全く新しい型とし、開発名称を(SplitProbe)別体型 probeと称した、セ

ンサー部とその他付随部分に分けた新型を開発した。構成部品をソーラーパネルで覆う設計とし

たことで、防水性や、メンテナンス性が大きく向上したほか、ハッチ部分だけに収まるようにな

った事で、見た目や、影響も最小限に抑える事が可能となった。

その他、通信方式が BLEに変更となったほか、バッテリーもリチウムイオンタイプに変更とな

る等、利便性、耐久性の向上も期待できる内容となった。

レシーバーと呼ばれるデータの表示部分に関しては、通信方式が変更になったのみで、その他

大きな変更は見送られた。以下【図 18】に詳細を示す。

【図 18】新旧変更図

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・車両総合管理システム現品確認(通信端末(OBC)及び、ソフトウエア)

【図 19】に、機材との関係性を示す。Probe部分で得られた生コン情報は、表示・蓄積部を介

して、OBCと呼ばれる通信部に集積される。この端末は、RC232,OBD-Ⅱ,の外部入力、及び、GPS、

Wi-Fi,セルラーモジュールを内蔵しており、集積されたデータを、運転手用に表示させたり、デ

ータをセルラー回線で打ち上げたりする役割を担う。いわば、クラウドに車両総合管理システム

の基幹部と言える。

クラウドに集積されたデータを可視化するソフトウエアを、メーカーでは Five Cubitsとい

う商品名で展開しており、U.S国内では実稼働 30000台の実績がある。

今回は、この Five Cubits に、Probeを統合実装する事が大きな開発部分であった。

(い)操作方法習得

・車両総合管理システム

システムは、インターネット回線を通じ、ID,PW を用いたポータルサイト形式であり、UI含め、

非常に使い勝手の良い物であった。操作方法は、次の【図 20】に示した、マニュアルに沿って、

実地訓練を受ける事で、問題なく把握する事が出来た。

【図 19】 システム構成

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【図 20】 車両総合管理システムマニュアル

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(う)取付作業確認

・新しい Probeシステム

・通信端末(OBC)

現地の生コン事業者の協力を得て、取付手順を確認する事が出来た。

旧型と大きく異なるのは、ドラム部分への取付手順である。新型は、旧型と異なり1ヶ所にす

べての部品が取付けられる為、「ベースプレート」と

呼ばれる、固定用金属板をドラム部に溶接する必要

がある事がわかった。

この部品を正確にかつ確実に取付が出来ないと、

計測に支障が出るばかりでなく、使用中に外れてし

まうなど、重大な事故を誘発する恐れがある。以下

手順を【図 21】にまとめた。

*取付ノウハウ等の秘匿部分がある為、一部の

み掲載する。

(イ)日本国内でのプロトタイプ取付テスト

海外事例との一番大きな違いは、ドラムの点検口(ハッチ)に取付が可能であるという点であ

る。これを取外して作業できることで、車両への負担が少なくなり、また、安全確実な作業が可

能である。

これを踏まえ、実際に取付テストを行った結果、次の 2点を国内向けとして変更する事にした。

・穴開け作業には、ガス溶断機を使わずに、ディスクグラインダーを使用する。

ハッチを外して作業出来る為、安全性が高く、かつ正確な切断が可能

・ベースプレートの溶接は、裏側から行う。

検証の結果、ベースプレートの両側に、大きな隙間が空く事が分かった。これは、海外のミキ

サー車と比べ、ドラムの直径が小さい事が影響していると推測された。その為、より作業がしや

すい裏側からの溶接作業を標準作業に変更した。

また、作業完了までは約 1時間程度必要で、溶接工程が多くなることから熱でハッチが歪み、

再取付に時間がかかる事も判明した。

【写真 5】 作業風景

【図 21】 取付手順

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45

これらの問題は、作業習熟度が上がれば、解

決でき、また、のちの 5社での取付作業の結果

から、半自動溶接機を使用すると、より早く、

確実な作業が出来る事も判明した為、作業工程

に推奨部分として、導入した。

(ウ)取付作業手順書の作成

上記の結果を踏まえ、国内の車両に適応した、システム取付作業マニュアルを作成した。

*詳細は、別添資料「Split Probeシステムの取付手順書 ver1.4」を参照の事

(部外秘の部分が含まれる為、一部抜粋して掲載する。)

(b)法準拠

結果として、プロジェクト期間中に OBCの電波法認証の取得は間に合わず、方向の転換を余儀

なくされた。

当初から、OBC の認証等に関しサプライヤーが理解を示さない(渋っている)との情報があっ

た。彼らは、日本向け独自に加工や、部品変更をする事に難色を示していたのが主な理由であっ

た。

そこで、当社、メーカー共同で確認作業を行い、日本国内での使用に際し、SIM モジュールを

変更する事なく、使用可能な事を確認出来た事から、サプライヤーとメーカー間での交渉が再開

された。

しかしその後も現場担当者間での交渉が遅々として進まない事から、相互役員間での交渉に移

行した。その際、万が一 OBC認証作業への協力が拒否された場合、日本独自の通信端末開発への

協力、または他の OBC サプライヤーへの移行等の遅延打開にむけたオプションも含めた。

以上の結果、既存 OBC を使用した電波法認証への実務プロセスが何とか始動したが、残念なが

ら、必要書類の不備や遅延などが頻発する事となり、結果、プロジェクト期間内での認証取得は

不可能である事が確認された。

一旦、この OBCを用いた認証プロセスは凍結し、打開策を相互に検討する事となった。

c)システム配備

取付代理店設立に向けた教育の一環として、取付作業、及び設定作業を行った。

詳細は、後術する、5.3 ビジネスモデル検証(1)取付代理店設立 d)システム取付作業、保守点

検作業の教育、習得 OJTを参照の事。

③作成物 スマートアジテータープロトタイプシステム(システム本体)

取付マニュアル(一部抜粋)SplitProbeシステムの取付手順書 ver1.4

【写真 6】 国内テスト取付作業風景

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(2)測定精度検証

①目標 本システム(国内仕様)の完成

②結果 Probeシステム部分の測定精度は旧型同等以上を示した。

(a) 工場間の測定差比較検証

・スランプ測定値

各社から収集したデータのうち、故障や、コンクリートの付着等による、異常値を除いたデー

タを、以下【表 19】に取りまとめた。会社毎に、左から Probe 測定値、実測値、Probe 測定値か

ら実測値を差し引いた、計測差を示している。有効データ数は合計 153点となった。

次に、測定差の偏差を求める為に、【図 22】のように、測定差(cm)毎の件数を取りまとめ、

会社間での測定結果の傾向を確認した。

【表 19】 スランプ値測定結果

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各社ごとに傾向をまとめた。

A社:+1.5cmの 5件をピークに、バランスよく正規分布している。

B社:+1.0cmの 9件をピークに、バランスよく正規分布している。

C社:- 1.0cmの 7件をピークに、バランスよく正規分布している。

D社:+1.5~3cmのあたりをピークに、+側にずれた結果多く偏差がおおきい。

E社:±0.0cmの 7件をピークにバランスよく正規分布している。

結果、D社を除く 4社はピークが‐1.0~+1.5cm の範囲に入り、偏差幅も同じ傾向を示した。一

方、D 社に取り付けた機材や測定方法は他社との差は見られず、旧型の偏差の傾向を考えても、

配合や、骨材等の材料違いに起因する差とも考えられなかった。

今回の検証中、各社で大きく異なる部分(変動の要素)は測定場所(工場・現場)の割合以外に

はなかった為、その傾向を【表 20】

にまとめた。

すると、驚く事に各社共に現場で

採取された値の方が、工場で取得し

たデータよりも計測差が大きいとい

う結果が得られ、かつ、現場採取の

割合が増加するに従い、そのずれが

大きい傾向が示唆された。また、A、

D社においては、現場採取の割合が9

割を超えており、B,C 社ではほぼ 5割、E社は工場採取が 10割という結果と合わせると、よりそ

のような傾向があると考えられた。現場での計測値は、実際の納入検査や、品質確認を目的とし

て行われたものを比較データとして採用したものと、Probe による計測値を比較したもので、現

場では、合格範囲に合致させたいという潜在的な恣意性を排除出来ないという現状の問題点が、

図らずも露呈される結果となった。

D 社は、小口の物件への対応数が多い事が特徴で、こうした恣意性が他社と比べ、強く出た結

果が、+側へのずれと、偏差が大きくなった原因だと考えられた。

【図 22】 スランプ値測定結果の傾向

【表 20】 採取場所による測定精度差

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・温度測定値

各社から収集したデータのうち、異常値を除いたデータを、以下【表 21】に取りまとめた。会

社毎に、左から Probe 測定値、実測値、Probe 測定値から実測値を差し引いた、計測差を示して

いる。有効データ数は合計 139点となった。

次に、測定差の偏差を求める為に、【図 23】のように、測定差(℃)毎の件数を取りまとめ、工

場間での測定結果の傾向を確認した。

【表 21】 温度測定結果

【図 23】 温度測定結果の傾向

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各社ごとに傾向をまとめた。

A社:±0℃の 10 件をピークに、バランスよく正規分布している。

B社:+0.5℃の 12件をピークに、バランスよく正規分布している。

C社:±0℃の 6件をピークに、バランスよく正規分布している。

D社:±0℃の 15 件をピークに、バランスよく正規分布している。

E社:+0.5℃の 11 件をピークにバランスよく正規分布している。

結果、すべての会社において、偏差幅も小さく、正しく計測出来た事を示した。

(b)旧型との測定精度比較検証

(a)で得られた結果を元に、各社から得られたデータを1つに取りまとめ、旧型で得られた実証

データとの比較検討を行った。

・スランプ測定値

【図 24】は、各社から得られたずれの発生件数別に合算したものである。ずれ幅最大値を±3cm

程とし、0~0.5cm のずれ値をピークとした、非常に綺麗な正規分布を示している。

次に実測結果を新型旧型で比較した、【図 25】に旧型、【図 26】に新型の結果を示す。

【図 24】 発生件数取りまとめ(スランプ値)

【図 25】旧型 Probeシステムの計測結果分析表

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旧型と比較した結果、新型においても、赤い線で示した信頼限界線(±2.5cm)内にきれいに収まり、

かつ、上下の偏りも旧型に比べ少ない事が分かった。

よって、目標である、旧型と同等以上の測定精度がある事が実証された。

・温度計測値

【図 27】は、各社から得られたずれの発生件数別に合算したものである。ずれ幅最大値を±3℃

程度、かつとし、±0℃値をピークとした、非常に綺麗な正規分布を示している。

【図 26】新型 Probeシステムの計測結果分析表

【図 27】 発生件数取りまとめ(温度測定値)

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次に実測結果を新型旧型で比較した、【図 28】に旧型、【図 29】に新型の結果を示す。

旧型と比較した結果、旧型が、若干高めに推移していたのに対し、偏りが少なく、かつ、精度良

く計測できている事が分かった。これは測定精度を上げるべく、機材内の熱電対の設置位置や、

数等の設計変更を行った結果が良くあらわされており、目標である、旧型と同等以上の測定精度

がある事が実証された。

③作成物 スマートアジテータープロトタイプシステム(システム本体)

【図 28】旧型 Probeシステムの計測結果分析表

【図 29】新型 Probeシステムの計測結果分析表

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(3)堅牢性検証(故障事例等のフィードバック)

①目標 本システム(国内仕様)の完成

②結果 Probeシステム部分の初期不良はすべて改善した。

検証を続けるうちに、製品品質に関係するいくつかの問題点が発見された。

発見された問題点は逐次メーカーに情報を提供し、対応策を得ながら対応を進めた結果、すべて

の項目で解決でき、初期不良としてはすべて解決するに至った。

発生した問題不良内容毎に内容と、対応(解決)策を以下【図 30】にまとめた。

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③作成物 スマートアジテータープロトタイプシステム(システム本体)

【図 30】故障・及び対策一覧

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5.2 提供価値の検証 (1)生コン事業者コスト削減

①目標

・各生コン事業者コスト削減 5%

(拘束時間に対し、比較対象の相対業務時間が、何%減らせたかを目標とした)

②結果

・配車部門において平均 3.3%(年間 169602円)の業務時間削減の実績が得られた。

・技術部門において、推定平均 20.6%(年間 1024878円)の業務時間削減が見込まれた。

・合計 12.1%(年間 119万 4480 円)が削減可能と判断

(a)各社データの取りまとめ

データ取りまとめに関する基本的な考え方と方法

配車・出荷部門において一番効果が発揮されると考えられたのが、GPS を使用した車両現在地

の取得による効果である。これにより、配備車両の削減や、関係先(納入先・運転手・顧客等)

との連絡業務の時間削減が期待できる為、業務時間のうち、これらに費やされる時間の割合を求

め、GPS システムを導入した後に、どれだけ時間削減が出来たかを確認した。また、時間当たり

の単価を 2200円として、人件費計算を行った。

検証用の GPS システムは 5 社中 3 社に配備を行ったが、2 社はすでに GPS を自社配備していた

為、導入前後の結果をそのまま比較検討出来なかった。そこで、工場毎に、導入前後での変化率

を割り出し、期間全体を、GPS 導入した場合、しなかった場合とそれぞれ「仮定」した補正を行

って、コストがどのように変化したかを確認した。

以下、補正に対する基本的な考え方を記す。

・GPS 情報端末を現場に配備する事で、現場担当者との電話連絡回数は大幅に減らす事が可能

である。打設量が多い現場を抱える会社程、この効果が大きい。打設開始、終了時だけの電

話連絡で済めば、少なく見ても連絡回数が 1/3に減少する事が予想される。一方、小口件数

が多い会社ではこの効果が少ないと予想されたが、時間短縮という効果に差は発生しないと

考え、全社導入後 1/3 になるとして、補正した。

また、GPS 導入前後でこの回数の減少効果が確認できたが上記の理由から、すべての作業を

電話から、GPS 確認作業へ移行するのは難しい事が確認できた。そこで、業務の移行率を算

出する為、出荷台数 1 回あたりにおける、電話等での連絡対応回数と、GPS で位置確認行っ

た作業発生数をそれぞれ算出した。その値を移行前後の補正値として使用し、最終的な効果

として算出した。

・現在地の確認作業は GPS を導入した場合、電話無線機使用から GPS画面確認に完全に移行す

ると考えられる為、1分(回)から 10秒(回)に短縮として補正した。

但し、GPSを既に使用している会社では、導入前後の補正は行わない。

・ドライバー向けの配達現場の位置情報の提示を目的とした地図等の準備作業は、現状、詳細

地図等をコピーする等、旧態以前とした作業を行っている会社が多い。GPS システムを使用

した場合、この業務は大幅に短縮できる事が予想されたが、疑似的なシステムでの検証を行

った事もあり、前後での効果に差が出なかった。その為、新システム導入前の値は、すべて

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旧態にて作業をしたとして、補正。導入後はすべて新システムにて作業したとして補正した。

・台数補正

未導入の会社へは今回 5台のみの配備で検証を行った。そこで、すべての車両にシステムを

導入したと仮定し、車両位置を確認した業務のみ、補正した。

品質技術管理部門において、一番効果が発揮されると考えらえたのが、納入試験の代替として

使用する事での現場試験に赴く時間等の短縮効果である。今回の検証では、各社が現場に赴く

作業時間割合を明確に取得する事ができた。

この作業には、公的な現場納入試験だけでなく、品質の確認等も含まれており、導入後はこ

れらの対応時間を大幅に削減できると考えられる。そこで、導入後の効果を作業時間が 1/3に時

間短縮できる(人的な測定項目が 1項目を残すのみとなる)と仮定し、補正した。

(b)削減可能時間の算出結果

実証実験参加工場毎の基本情報を【表 22】に示す。得られたデータには匿名性が必要な部分が

含まれる為、それぞれの会社名を A~E 社と表記した。

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以上の条件を付し、得られた詳細を【表 23】に。コスト削減データとして、削減時間と金額のみ

抽出したものを【表 24】に示す。

【表 22】 実証工場基本情報

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【表 23】 削減効果測定結果

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【表 24】 コスト削減データ

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次に、これらかから部門毎にデータを取りまとめ、詳細と傾向を確認した。

【図 31】に配車部門の結果を示す。

これによると、配車部門において、平均 3.3%の作業時間軽減と、年間約 17 万円の人件費削減

が見込まれる結果を得た。

B,C,D,E社は出荷数量、台数毎でも大きな差はなかった一方、A社の削減効果が非常に高い事が

見て取れる。

A 社の作業内容を精査したところ、他社と比べ、ドライバー向けの地図の印刷や指示作業に時

間を費やしている事が判明した。

A 社は顧客先に中小企業が多く、現場数が多い事や、作業自体も、顧客から送られてきた住所

情報を元に、地図帖から場所を調べてコピー、説明する等、手作業が中心で、より時間を消費し

ている事が確認できた。

これら現場指示作業を配車担当の手間をかける事なく、出荷システムと連動したナビゲーション

システム等を用いて、省力化できれば、非常に高い削減効果が得られる事になる。

一方、C社と E社の電話対応時間が多い事も結果から判明した。両社共、大口の現場対応数が多

く、現場から出荷状態の確認電話が頻繁にかかってきている実情を表している。

現場数のわりに電話対応時間がかかるという事実は、体感的に得てはいたが、大口対応度の高

い会社順の C.E.D で結果が並んでいる事からもそれが証明される結果を得られた。

この点は、如何に現場担当者との連絡作業を減らせるかという方法を考えればよく、タブレッ

ト等で現場の納入担当者と情報を共有する事が出来れば、大きな削減効果を得られるという予想

を裏付ける結果となった。

【図 32】に技術部門の結果を示す。

これによると、技術部門において、平均 20.6%の作業時間軽減と、年間 102 万円の人件費削減

が見込まれる結果を得た。この部門の検証結果は、現場試験に赴いた対応時間を元に作成されて

おり、つまるところ、各社のこの業務に対応する時間がそのまま削減率の違いとなって表れてい

る。

しかしながら、各社が技術部門においてここまでの時間を費やしているという事実は、我々と

しても驚きの結果であり、本システムが導入される事で得られる人的コスト削減の効果は非常に

大きい事が確認できた。

一方、結果としては、C社を除く 4社が同じ傾向を示したが、これは、C社の地域では、第三者

機関が現場納入試験を行う事が多く、顧客現場数に比べて、対応件数(対応時間)が少なくて済

むことを表しており、顧客対応の違いが結果となって表れていると考えられる。

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【図 31】 配車部門 コスト削減結果

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【図 32】 技術部門 コスト削減結果

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(c)結果

これらの結果を踏まえた、コスト削減効果の検証結果は以下【図 33】に示したように平均 12.1%

(年間 119万 4480円(250日))となった。

③作成物

・検証結果報告書

【図 33】 コスト削減結果取りまとめ

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(2)生コン PL保険割引率策定に向けた導入効果の実証(潜在的エラー発生率の測定と改善効果

の検証)

①目標

・潜在的エラー発生率の測定

・潜在的エラー品の処理費用検証

・納入事故発生率 50%削減

②結果

・潜在的エラー発生率の測定:平均 9.8%発生(348.3㎥)

・削減可能な費用:平均(年間 2089万 9776 円)

・納入事故推定削減率 85%

(a)各社データの取りまとめ

データ取りまとめに関する基本的な考え方と方法

本検証で必要な情報は、生コンが納入現場でどのような品質であったかを確認する必要がある。

そこで、4.2(2)測定精度検証を目的に得られた実測値から、現場で比較したデータのみを抽出

し、そのデータに対し、納入品毎の規格値から、±2.5cm 以上外れた規格外の件数を確認した。

このデータは、人的な計測によるブレや恣意的な要素の入っていないデータであり、ざっくりと

した潜在的エラー品と捉える事が出来る。

次に、納入事例ごとに、値が恣意的なものか本当に品質的に問題があったものかを判断する為

に、聞き取り調査等を行い、品質問題に起因すると考えられるものだけを抽出した。これは、現

場要求等での恣意性を排除するためのスクリーニングで、これで得られた結果が、潜在的エラー

品の発生件数と捉える事ができる。

このデータを時間、時期、配合や、発生傾向から推測される原因別に分類し、本システムの提

供価値で品質改善可能なものを抽出した。このデータが、最終的な目的である、網乳事故発生件

数削減率となる。

(b)潜在的エラー発生率の算出

(a)で示した考え方で抽出したデータを【表 25】に示す。検証結果として、以下の特長が発

見された。

・データは特定の車両に限定していない事から、信憑性が高いと考えられる。

・オーバーした値は規定値よりも最大 1.5cmである。

予想に反し、規定値からの大きなずれは確認できなかった。各社現状最善の管理が行えてい

ると考えらえる。一方、本システムの測定値の測定幅は、人的な偏差以下ではあるものの、

±2.5cm である。その為、規定値からは外れているものの、測定が-方面に振れた場合は、

合格となる可能性がある。本システムの測定偏差は両方向に同程度である事から、検証デー

タ件数の半数を実際のエラー発生率とした。

・会社毎に傾向が分かれる

通常、生コンの品質不良の原因のほとんどが、材料のばらつきに起因するものと、表面水

と呼ばれる、骨材に含まれる水分量のばらつきに起因するものである事が知られている。砂

や、砂利等は天然由来のものであり、どうしてもある程度のばらつきが発生してしまう。原

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材料の各規格上も容認されているが、それらが複合的に絡み合った時、予想以上の変化が製

品(生コン)に発生してしまうのである。

これまでは合否結果はあいまいな方向へとならざるを得ず、結果として、理論的、統計的

に原因追求する事が難しかった。しかし、今回の結果を見るに、工場毎にはっきりとした傾

向があるという事が判明した。

表中の「推測される傾向」にあるように、配合上の問題か、または突発的な問題かどうか

の判定が充分可能である事が示唆された。

原因がはっきりとしているこれら問題には、品質改善方法がある程度確立されており、改

善策を施工すれば、すぐにでも品質改善に結びつく。

原因不明と記したものは、より詳しい原因追求が必要であるが、突発的なエラー品である

確率が高く、本システムを用いても、納入を事前に防止する事は可能であるが、品質改善ま

では難しい案件であると推察された。

【表 25】 会社別潜在的エラー発生状況

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(b)推定潜在的エラー発生率の算定

以上の分析結果を元に、推定潜在的エラー発生率と、推定納入事故削減率を以下【表 26】にま

とめた。

潜在的なエラーは、納入台数に対し、9.8%発生している事が示唆された一方、事故削減は 85%

以上可能であるという結果が示された。

現状、納入事故発生件数としての具体的な統計値が存在しない為、GNN 会員数社の担当者に確認

した経験値では、月に 1社あたり平均 5~10回程度の納入事故が発生すると考えられ、これを出

荷量で換算すると、最大 1.0%前後の事故発生率と試算されている。

結果からは、この 10 倍近い潜在的なエラー品が発生していた可能性が示唆されたのである。

これは驚くべき数字と言わざるを得ない。しかし、対処をきちんと行う事で、品質向上率は 85%

にも及ぶことも判明した。

この事は、本システムの提供価値のうち、納入状態のリアルタイム監視が出来て初めて得られる

結果であり、本システムの品質向上性能として非常に大きな数字であると考えられる。

(c)削減可能な費用の算定

これら改善率を元に、削減可能な金額を算定した結果を以下【表 27】に示す。

【表 26】 潜在的エラー発生率と推定納入事故削減率況

【表 27】 削減可能金額

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今後 i-construction 等の普及により、全量検査等が義務化された場合、今まで意図せずにすり

抜けていた納入不良品分が処理費用として計上される可能性が高い。こうした場合、潜在的な納

入エラー発生率は、9.8%にも及び、年間に発生する処理費用は、1社あたり、年間 2000万円近く

になる事が示唆された。

一方、本システムを用い、製造精度を向上させる事で、85%もの品質改善が可能である事から、

金額に換算すると、年間 1770万円を削減できる計算となる。この値は、全数量検査となっても、

約 26万円/月の処理費用で押さえられる事を意味しており、現状の処理費用と比較しても約半額

程度に押さえらえる事が示唆された。これはつまり、全慮検査が行われていない現状においても、

充分な費用対効果が得られる事を表しており、また、全量検査が行われるような規格に変更され

た場合は、本システムのような品質管理システムが必須になるという事が明確に示される結果と

なった。

③作成物

・検証結果報告書

(3)エンドユーザーに対するデータ等販売と、販売実績の検証

①目標

a)アンケート等による提供価値の対価試算算出

b)データ等販売、納入実績 1件以上

②結果

a)アンケートによる提供価値の対価試算結果

抜粋した内容を以下【図 34】に示す。すべての内容は、別添資料検証結果報告書(Probe system

共同実験研究会メンバーによる、エンドユーザーにおけるプローブデータの活用方法~~デー

タ購入に関する価格シミュレーションアンケート~~)を参照の事。

1)建設現場向けコスト削減効果 a)廃棄物削減に対する価値(残コン・戻りコンの処理費用) 16 万円

b)納入試験を省略できる分の人件費に対する価値 20 万円~300 万円 c)納入数量に関する取りまとめデータの提供 3 万円 (公的な品質保証等の書面) 10 万円 49 万~329 万円 d)物件確保(技術提案)に使用する際の使用料(レンタル等) 10 万~1000 万円 (導入を検討可能な金額) 2)技術研究向け 生コン性状変化の実測ビックデータとしての活用 データを得ようとしたときの工数と同等の金額が妥当 1 工場、1 ヶ月分のデータ取得分と同等とした場合 30 万~50 万円 3)中小土木施工者の考える対価アンケート結果 日本の土木業界は旧体依然の極みで、IoT 技術を導入した際の効果は大きいが、スマートアジテーターの提供価値

単体では、中小施工者にとって効果が限定的。(便利だと思うが、工数軽減にはあまり寄与しない。)よって、提

供価値に対する対価は具体的にあげられない。 国の発注する公共工事(3 億円以上は義務的に、それ以下は希望型として、発注費の 10%上乗せ)には、こう

した i-con に関する費用として、「支援費」が出される特例がある。(H29 年度まで) 例えば NETIS のような、「評価制度加点方式」による受注者が費用負担する発想とは真逆である。

i-con を使用する事で、施工会社の人件費、経費、工期が大幅に減らせ、なおかつ、工事の精度向上にも寄与す

る事が事例から国もわかっている。 発注者(国)が「支援金」として金銭支援をし、技術力向上を推進しているという事は、エンドユーザーがそ

の価値を認めているという事であり、その「支援金」金額そのものが、提供価値に対する対価である。

【図 34】アンケート結果

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b) 1件(ゼネコンレンタル案件)技術提案としての本採用事例

共研メンバーであるA社がスマートアジテーターシステムをVE提案として使用した案件の受注

に成功した。

この受注案件には本システムを含め、5つの VE提案が盛り込まれており、総合的なコンクリ

ート品質向上に関する取り組みが評価された。施工者は、使用コンクリート全数量品質管理を

行った、国内初という実績を対外的にアピールする事が出来れば、業界内外に非常に大きなイ

ンパクトとを与える事になり、対価としても十分なポテンシャルがあると判断したそうである。

本案件は秘匿物件であり、場所等の詳細は伏せるが、公共施設の建築現場で、使用期間は 6ヶ

月を予定しており、結果として我々は約 300万円弱の受注金額を得るに至った。

2017年 11月以降の実使用への準備中であり、結果が非常に楽しみである。

また、この取付作業には、取付代理店契約を行った工場からも 1名派遣する事が決定した。

生コン事業者にとって、IoT 技術を用いた、新しいビジネスモデルが実際の形として動き出す

記念すべき一歩となった。

③作成物

検証結果報告書(Probe system共同実験研究会メンバーによる、エンドユーザーにおけるプ

ローブデータの活用方法~~データ購入に関する価格シミュレーションア

ンケート~~)

検証結果報告書(付加価値販売事例)

検証結果報告書(出張報告書 事-006) IPAエンドユーザー(YDN)中小ゼネコン調査

5.3 ビジネスモデル検証 (1)取付代理店設立

①目標:取付代理店5社設立

②結果:5社設立

a)選任者の選出

以下、【表 28】に示した作業に従事できる人材の有無の報告を受けた。全社、担当者を選出

する事ができ、代理店として機能可能な人材確保が出来ていると判断できた。

みつわ社 東伸社 金沢社 泰慶社 野方社

担当項目

【事業統括責任者】 山川 毛利和田(正)豊蔵(副)

石原(功) 坂口

【取付整備担当者】 多田 毛利弘中(正)近村(副)

石原(秀) 坂口

【PC等ITインフラ担当者】 岡崎 毛利和田(正)近村(副)

石原(功) 坂口

【交換部品等、物品管理者】 多田 毛利近村(正)弘中(副)

石原(秀) 坂口

【会計担当者】 山川 小野寺 中村 石原(功) 北里

担当者名

【表 28】担当者選出確認表

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68

b)保守運用体制整備

以下【表 29】確認表に示した、整備取付に必要な工具、機材設備等がそろっているかの報告

を受けた。全社すべての機材類が整備されており、全社代理店として機能可能と判断出来た。

c)取付マニュアル・作業標準の作成

東伸コーポレーション社で行った、プロトタイプの取付作業を元に、国内の車両に適応した、

システム取付作業マニュアルを作成した。

*詳細は、別添資料「SplitProbeシステムの取付手順書 ver1.4」を参照の事

(部外秘の部分が含まれる為、一部抜粋して掲載する。)

d)システム取付作業、保守点検作業の教育、習得 OJT

実際に各工場に赴き、OJT 形式で担当者に指導を行いながら、各社保有車両において、シス

テム 5台ずつの取付作業、及び設定作業を行った。

取付作業での大きなトラブルはなく、各社 1台に付き 2時間~4時間程の時間を要する結果と

なった。

ほとんどの部品はボルトオンで対応可能だが、Probe を取付ける為のベースプレートをミ

キサー車のドラム部分にある、ハッチと呼ばれる点検口に溶接する必要がある。

この工程に関する部分で追加作業が発生する事で、1 台当たりの取付時間の差を生む要因と

なる事が今回はっきりとした。主な要因として、以下 3点を挙げる。

・使用年数の長い車両の場合、ハッチのボルトとナットが腐食し、再溶接等の追加作業が発

生する。

・ハッチの全塗装が必要となった場合、塗料を乾燥させる追加時間が発生する。

・溶接作業の習熟度や、方法によって、溶接の熱によりハッチが歪曲する事がある。再取付

に際し、時間がかかる場合がある。

会社毎の対応内容詳細は、別添資料「取付・設定作業報告書」を参照の事

e)作業習熟度確認(認定)

各社が、認定取付代理店として求められるレベルにあるのかを判断する基準を作成し、作

必要な作業工具 みつわ社 東伸社 金沢社 泰慶社 野方社

・10㎜、12㎜、19㎜ メガネレンチ・ソケットレンチ 〇 〇 〇 〇 〇

・六角レンチ5㎜ 6㎜ 〇 〇 〇 〇 〇

・+#2スクリュードライバー 〇 〇 〇 〇 〇

・メジャー・油性ペン・錆止め塗料・コーキング材・マスキング材 〇 〇 〇 〇 〇

・サンダー 又は ガス溶断機 〇 〇 〇 〇 〇

・溶接機 ・ステンレス対異材溶接向けの溶接棒 半自動(固定) 手棒(固定) 手棒(固定) 手棒(固定) 手棒(固定)

・溶接スパッタ防止布 〇 〇 〇 〇 〇

・ワイヤーブラシ(塗装焼け処理用) 〇 〇 〇 〇 〇

・防護用具(保護メガネ・手袋・保護服・安全靴・ヘルメット・安全帯) 〇 〇 〇 〇 〇

【表 29】保守運用品確認表

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業に立会った状況や、故障対応等の結果から、各社の適正度、作業習熟度の確認を行った。

全社総合判定は 4以上となり、取付代理店としての基準は満たす結果となった。

会社毎の対応内容詳細は、別添資料「作習習熟度確認表」を参照の事

f)取付代理店契約締結

上記の a)~e)に示した、取付代理店としての素質が、全社備わっている事が判明した。

その結果を受け、各社に取付代理店として契約する意思があるかを確認した。

予定していたすべての機材が手元にない状態であっても、システムの提供価値に共感をも

ち、取付代理店として、活動したいとの申し出が全社より得る事が出来た。

結果、全 5社と正式に契約書を交わす事で、取付代理店の全国網の礎として、構築する事

が出来た。

③作成物 取付マニュアル(一部抜粋)SplitProbe システムの取付手順書 ver1.4

取付・設定作業報告書

作習習熟度確認表

(2)当社からユーザー間の適正なハードウェア販売価格・システム使用料の確定

①目標

・ハードウェア販売価格 63.5 万円/台(取付費用込)

・SIM通信費用を含めた 1車両あたりの月額費用 3300 円/月

②結果

(1)仕入れ値の確定

残念ながら、本プロジェクト期間中に OBC、及び、Monitor部分の電波法認証作業が終了しな

かった関係で、金額の確定には至らなかった。

OBC を既存サプライヤーから変更する可能性もあり、メーカーより当初予定よりも金額が上昇

する可能性を示唆された。

よって、以下【表 30】に示された金額を仕入れ値として確定した。

(円安を見越し、120 円/USD と仮定した)

結果、試算合計 480000円に対し、20400円上昇する結果となった。

【表 30】仕入れ値確定表

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また、システムへのアクセス費用や、通信費、利用料といった、課金金額に関しては、当初メー

カーより 50USD/台前後で販売したいとの申し出があった。しかし、システムの完成を見ていない

事や、彼らが U.S 国内で提供しているデータすべてが本システムに反映出来ない事から、国内導

入の際の金額確定には至らなかった。

得られるデータ内容や、開発状況から勘案するに、少なくとも、当初の予価の 1/3程度が妥当

と判断しており、2000円/月・台を設定価格とした。

また、通信に必要な SIMは通信料に変更はない。

②取付時の工数(人件費)・その他経費の確定作業

5社での取付作業の結果、作業者の熟練度や、取付車両の状態等にもよるが、2名で最大 4台/

日の取付が可能である事が判明した。

一方、これまでよりも溶接にかかる時間、技量が必要であり、特殊技能作業者としての対価が妥

当であるとの判断に至った。よって、15000 円/半日・人の派遣費用に変更した結果、1台当たり、

15000円の取付作業費を計上する結果となった。

③販売予定価格の確定作業

上記①と②を元に当社の経費その他を見込んだ 1台当たりの原価を【表 31】に示す。

1台当たりの原価は、 試算合計 530292円に対し、42378円上昇する結果となった。

次に、この原価を元に、【表 32】および【表 33】に示したように、目標利益と販売設定金額を

算出し直した。

販売目標台数や、目標利益等、元となる販売計画値は変更せずに、その数値に合致するよう、販

売価格及び、月額使用料の検討を行った。

【表 31】原価確定表

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【表 33】販売価格確定表

【表 32】目標損益計画確定表

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当社が得る月額費用を安定した収入として見込むには、1500 円/月前後が分岐点になるという

試算結果を得ていた為、これを 1500 円として計上した場合、エンドユーザーへの課金負担は、月

額で、4300 円と試算された。

逆にユーザー目線でこの金額を考えると、4000円台という額は、抵抗感を生むことになり、あま

り適した金額とは言えない。

そこで、極力この金額を押さえる事を第一の目標として、当社への上乗せコスト分を 500円差

し引いた 3800円として設定して、販売価格等の試算を行った。

結果、取付費込の販売価格を 672500円とした場合、販売目標台数や、目標利益、継続的な販売

体制の構築等、元となる販売計画値は変更せずに、目標額を達成できる事が判明した。

④導入会社での投資対策

次に【表 34】に示したように、ユーザーの投資対効果表の金額を変更し、費用対効果を検証した。

結果、投資額は、10台導入時においては、初年度で、43.5 万円増加するが、コストダウンの試

算結果が当初よりも 500万円程度増加しているため、充分に費用対効果を発揮する事も示唆され

た。

これらの結果を元に、次ぎの 2点のユーザー販売価格が算出された。

【表 34】投資対効果確定表

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・ハードウェア販売価格 672500円/台(取付費用込)・SIM通信費用を含めた 1車両あたりの月額

費用 3800円/月

③作成物 検証結果報告書

(3)ユーザーに対する導入意識調査(事業展開した際のマーケティングプランの策定及び数値化

できないメリットの顕在化)

①目標

ユーザーに対する導入意識調査の結果(実導入や、前向きに検討する企業数の割合)が全体

の 50%。

②結果

(1)有効回答数と回答率

・アンケート回答数:29(人)社

・アンケート回答率:30.2%

回答者(社)は合計 29件に上り、回答率としては 30%を超えた。公平性を保つために、回答し

ていない会社へのプッシュ等は行わなかった。

また回答内容に関しても、抜けや、未回答もほとんどなく、真摯な対応、回答結果を得る事

が出来た。

(2)目標に対する回答結果

本システムの導入に関して、前向きに考えている回答者(社)の割合は、以下に示した

ように、システム自体への興味の割合は 95%を超え、具体的にまえむきに検討する回答

者(社)の割合も 58.33%となり、目標であった、50%を超える結果を得られた。

・スマートアジテーターのような生コン総合管理システムに興味があるか

非常に興味がある・興味がある 合計 95.83%

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・スマートアジテーターの導入検討

すぐに導入したい・導入検討をしたい 合計 58.33%

③アンケート結果の精査とマーケティングプランの作成

(1)結果項目毎の傾向分析

アンケートで得られた回答毎に、どういった特徴があるかを分析した。以下、質問順に回答

結果と分析内容を記載する。

[Q1回答者の役職]

90%以上の回答者が経営に関する何らかの決定権を保有する立場であり、中小零細事業者が中心

に構成される本業界では、信憑性のある回答が期待できていると考える事ができる。

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[Q2回答事業者の所在地]

出荷

(千 m3) 全国比(%)

プラント数

全国比(%)

回答数 全国比(%)

人口分布

北海道 251 4.98 147 8.42 1 3.45 4.23

東北 665 13.2 217 12.43 3 10.34 7.07

関東 1711 33.96 447 25.6 8 27.59 33.83

中部 518 10.28 179 10.25 9 31.03 16.89

近畿 541 10.74 171 9.79 5 17.24 17.74

中国 358 7.11 174 9.97 1 3.45 5.85

四国 260 5.16 122 6.99 1 3.45 3.03

九州 603 11.97 253 14.49 1 3.45 10.24

沖縄 131 2.6 36 2.06 0 0 1.13

合計 5038 100 1746 100 29 100

日本における生コンの生産業者は大多数が中小企業で構成されており、平成 28年度の調査では

全国で 3,041 社、3,368工場が存在する。

回答数と所在地は、中部 9・関東 8・近畿 5・東北 3・北海道、中国、四国、九州各 1となってお

り、母数が少ないため地域性までは読めないが、概ね全国に分布しており、かつ、全国調査結果

で得られた分布数に近い結果を示しており、有効な回答と判断できる。一方、導入意思と、所在

地域との大きな相関は見られなかった。

[Q3業種]

回答者(社)は GNN(元気な生コンネットワーク)加盟社であり、そのほとんどが生コン製造

事業を主な生業としている。回答結果も構成比に従っており、有効な回答と判断できる。

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[Q4【2017 年上半期平均月別出荷量】会社規模の調査]

出荷数量 1000~5000m3 が大半を占める結果となり、全国平均値である、1 工場当たり 2000 ㎥

強に合致した内容であり、有効な回答と判断できる。

導入意思との相関を見た結果、出荷数量が 5000m3以上と回答した 25事業者のうち、76%(19社)

がスマートアジテーターシステムに対し強い関心を示し、52%(25社)は導入意欲を持っており、

出荷数量との関係性が確認できる。

[Q5社員数]

社員数が 30 名以下の小規模な会社が 7割近くを占める結果となった。これも全国調査と同様の

傾向を示している事から、データの有効性が確認できた。

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一方、社員数によるスマートアジテーター導入への相関は観られなかった。

これは、生コン工場は輸送を自社の社員でもつ場合社員数は比較的大きくなり、外注輸送会社へ

の委託度合いによって左右されるため、会社規模(出荷能力・売上)と社員数は必ずしも一致し

ない事も一因と考えられる。

[Q6車両保有台数]

20 台までの保有数がほとんどを占め、全国調査時の平均である 14 台に合致する為、データの

有効性が確認できた。

導入意思との相関を確認した結果、車輌保有台数順に観た場合、20台以上保有している会社は

全てが導入に積極的であった一方、20 台以下の事業者では導入する意志のない工場の割合が 18

工場中 7社(38.9%)に達した。生産規模と市場の影響が大きくかかわる可能性が示唆された。

[Q7社員の平均年齢]

平均年齢は 40歳代以上がほとんどを占めており、若手の参入が厳しい状況が感じられる。導入

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意思との明らかな相関は見られなかったものの、労働人口減少により、高齢者や女性など省力化

が必須となる段階においてニーズは高まるものと予想できる。

[Q8社員の過不足感]

現状、労働力がひっ迫しつつある業界事情が明確に確認できた。

一方、社員の過不足によるスマートアジテーター導入意欲への相関は認められなかった。本シス

テムの提供価値として、生産性向上に寄与する事を積極的にアピールすれば、より顕著な訴求要

因になると考えられる。

[Q9社員募集の有無と結果]

各社積極的に募集を行っている事がわかり、人員不足等が顕在化している事が分かる。

一方、導入意欲との相関ははっきりしたものは得られなかった。

前問同様、生産性向上への効果が的確にアピールできれば、潜在的ニーズを掘り起こし可能と予

想できる。

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[Q10プラント設備更新予定]

それぞれの設備更新予定を確認する事で、各社の事業継続への意識を確認した。

結果、各社事業継続に向け、計画立案、遂行しており、企業規模の縮小や統合等、消極的な行動

は確認できなかった。

導入意欲との相関を検証する為、導入済み 4、1 年以内 3、2-5 年以内 2、6-10 年以内 1、計画な

し 0とスコアリングを行い、合計を投資意欲として並べて検証した。

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1.全てのスコアを合計した場合

2.出荷システムと操作盤(IoTに関連の高いもののみのスコア)

としたが本装置導入意欲に対して傾向は読み取れなかった。

維持保全中心の設備更新と、効率化を上手く統合できるようなタイミングや設備の開発が重要に

なる事が示唆される結果となった。

[Q11 IoT知識との関連]

ここでは次のような設問を投げかけ、IoTという言葉に対する認知度を確認した。

「IoT とは、(英語: Internet of Things)の略語で、様々な「モノ(物)」がインターネットに

接続され、情報交換することにより相互に制御する(離れたモノの状態を知ったり、状態を変え

たりする)仕組みの事をいいます。こういった技術がある事を知っていましたか。

結果、7 割近い回答者(社)が知識を有しており、業界内での浸透度はかなりあるという結果を

得られた。

導入意欲との相関は、IoT の内容を理解し、保有設備に導入済みと答えた 4 社は本装置に強い関

心を持ち、4 社中 3 社は直ぐにでも導入を希望している。また、知識のある社はほとんどが本装

置の導入検討をするとしている。つまり、知識→興味→投資意欲 という公式が成り立つ結果と

なった。

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[Q12既に導入した IoT機器数との関連]

この設問では業界にある IoT、ICT技術がどれくらい普及しているかの確認を行った。

結果、プラントメーカが用意する、生コン工場の一般的な設備である表面水測定セ

ンサーを筆頭に、GPS 車両管理、ドライブレコーダー、無線機、デジタルタコグラフ等、生産性、

品質向上への高い関心と訴求力が確認できた。

導入意欲との相関をみると、全ての機器の導入数順で観た場合、導入数が 2種類以上導入して

いる社は、本装置に深い関心を示し、13社中 3社は直ぐに導入を希望し、1社を残す9社が導入

検討を希望している事が分かった。つまり、IoT 関連設備を積極的に導入している社ほど、その

生産性向上への期待が高く、その効果を実際に認めている事がわかり、本装置にも深い関心があ

ることが認められる結果となった。

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[Q13 i-Constructionの認知度との関連性]

ここでは、業界内の IoT技術の集大成と目される、i-Constructionに関する意識調査を行った。

結果、8 割が聞いた事があり、内容も理解した回答者(社)は 4 割にものぼり、感心の高さをう

かがわせた。

導入意欲との相関では、直ぐに導入したいとする4社は内容をよく理解していると回答してお

り、Q12 の回答と合わせ、経験や効果を実体験している社程、その関心の深さを覗わせる結果と

なった。

[Q14 スマートアジテーターに期待する価値]

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この設問では、当システムのもたらすと考える提供価値を列挙し、得られる価値として重要度

が大きいもの上位 5つを選定してもらうようにした。

結果、品質管理への応用が最もイメージしやすいためか、製造現場での応用に対する期待が最も

高く、製造現場から離れるほど期待値は低くなる傾向が読み取れた。

これまでの IoT機器は、コスト削減作用に注目されるものであり、データの販売等、新たなビ

ジネスチャンスに結び付くものであるという認識をいかに広めていくかが普及へのポイントであ

ると考えられる。

(3)アンケート結果の精査とマーケティングプランの作成

以上アンケート結果の考察から、導入意思と設問キーワードの相関検証結果をまとめたものが、

【表 35】である。

これによると、地域差はさほどなく、月間出荷量が 5000 ㎥以上で、保有車両が 20台以上の中

堅規模の会社における導入意思が高い傾向にある事が示唆された。

また、そのなかでも IoT技術に興味があり、すでに導入経験があるなど、その効果を実体験して

いる会社程、導入意思が高い傾向にある事が分かった。

提供価値(省力化や生産性向上等)をイメージしにくい会社に対し、どのようにアピ―ルしてい

くかが普及への大きなポイントである事がユーザーの意見からも明確になった。また、ユーザー

【表 35】導入意思とキーワードの相関関係

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のイメージする本システムの提供価値に関しては、製造現場での応用に対する期待が最も高く、

製造現場から離れるほど期待値は低くなる傾向が読み取れた。これまでの IoT機器は、コスト削

減作用に注目されるものであり、データの販売等、新たなビジネスチャンスに結び付くものであ

るという認識をいかに広めていくかが普及へのポイントであると考えられる。

④作成物 アンケート質問内容

アンケート調査結果

詳細は、別添資料「アンケート質問内容」「アンケート調査結果」を参照の事

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6. 事業化に向けた課題と展望

6.1. 本システムの堅牢性に関する課題と今後の対策

初期不良に関しては、原因特定と、対策が終了したと考えており、その後交換対策を施したハ

ードウェアには同様の不具合は発生していない。

今後必要とされるのは、長期間使用した際の耐久性の部分である。

数年単位でのフィールドテストが必要な部分として、ドラム内のセンサー部分の耐摩耗性、コン

トロールユニットの耐水性(耐候性)、ソーラーパネルの耐用年数等が上げられる。

メーカーとしても、こうしたフィールドテストは、日本のような厳しい気候下で行う事で非常

に高い効果を得られるとの認識をもっており、これまでと同様の連絡体制を継続しながら、より

使い勝手の良い製品への改良を目指す。

6.2. コスト削減・品質向上効果の精査など提供価値の更なる精査

今回の検証で得られた結果は、配車、及び技術部門等の限定的な個所での検証に留まっている

が、それにも関わらず、かなりのコスト削減効果が期待できる結果を得られた。

特に製造業において、センサリング技術の向上で全数検査が可能となった時の最大のメリット

は、膨大な計測結果から得られるデータを用いた、精度の高い分析と予測結果による、製造精度

の向上にあると考える。

しかし、本業界でのコスト削減への認識は、人的、物的なリソースだけにとどまり、品質向上

こそが、逆に大きなコスト削減効果生むことがあまり理解されないで来た経緯がある。これは、

納品検査が人的なサンプリング検査による、恣意性を排除できない現状が続いてきたからこそで

あり、「何とかなるのであれば、安かろう、悪かろう」というベクトルが働くのも無理はない。し

かしながら、時代はその先へと進んでいる事は、もはや明白な事実である。

こうした中で、規格が整備され、より高精度な品質要求が求められたとき、中小が過半数を占

める本業界の中で、撤退するのか否かの選択を余儀なくされる事業者が出てくる可能性も否定で

きない。これは、これまで以上に生き残りをかけた取捨選択の時代が到来する事を意味している。

本システムのようなセンサリング技術を使用する事で、高い改善効果が期待できる事が実証で

きた今、いつ、どのタイミングでどういった技術を導入し、生き残りの戦術として使用するかは、

経営者の手腕が問われるという、ある意味、恐ろしい現実を突きつけられた結果と感じる。

6.3. エンドユーザーへの提供価値の「見える化」とそれを通じた今後の販売戦略

(1)技術者同士の関係性から生まれた、ビジネスモデル

通常、ゼネコン社に対する生コン製造業者の立場は、供給者と施工者という従属関係に近い存在

との認識が一般的である。

私見で恐縮であるが、共同実験研究会が発足した当初、しがない生コン屋の一社員である私が、

一流の技術者から「一技術者」としての意見を求められ、共に実験作業を行えるという夢のよう

な状況に、社員として幸せを感じていたにすぎなかった。

しかし、共同実験を継続する事で、これまでにない密接な関係を構築できた事は大きな結果と

言え、しかもエンドユーザーとの共同開発案件に成長した今、、システムの価値をエンドユーザー

自ら確認し、購入だけでなく、レンタルというビジネスモデルを共に構築する事が出来るに至っ

た。さらに、相互で構築したビジネスモデルを活用して、実際に VE提案として納入する事が出来

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たという実績に結び付ける事が出来るとはその時、誰が想像していたであろうか。

どのビジネスにおいても、商品開発はさる事ながら、販路拡大等、ビジネスモデルの構築に非

常に腐心する。市場調査を行い、メインターゲットを確定し、それに合わせて様々な手法を用い

ながら、販売拡大をねらうというのが普通だろう。

我々は図らずとも、技術者同士の結びつきを大切にすることで、結果、システマチックなビジネ

スモデルの構築まで達成できた意義こそ、まさに GNNMJ社の存在意義にマッチする、大きな結果

を得る事ができた一番の理由であると考える。

(2)本システムと i-constructionとのリンク(何に価値を求めるか)

i-construction の導入目的は、生産性の向上である。多大な労力を使用している箇所を、IoT

技術を使用して、効率を上げられれば、すべて使いたいというのが、中小土木施工者の本音であ

る。

i-construction を導入する一番の目的は以下の 3点に集約される。

①受注増加。

②工期、人件費等の費用圧縮が期待できる

③人材確保への寄与(減り続ける人材をこれまでより少ない人数でまわせたら)

例えば、リアルタイムでの車両位置情報 生コン状態の情報提供等、現場に居ながらにして、

状態が分かれば非常に便利であるし、得られたログデータの提供があれば、現場の納品データに

紐づけして、維持管理にも使用できる。機材レンタル(NETIS 等)があれば、もちろん、加点項

目として出せるので価値はある。

システムから得られる生コンに関する製品情報は、納品データの電子化という項目に即対応で

き、非常に効率が良くなると予想される。この点が一番の価値を生む部分だと考えられる。

しかし、本システムを導入しても、NETIS 加点としては効果が期待できるが、中小施工者では

大きな効果は生まないのではないかと推察する。その理由を以下に記す。

①1 回で使用する生コン使用量が比較的少数な為、車両納入の効率化、(現場立会)等での効果

は小さい。

②ログデータ単体では、3D データとのリンクが出来ないため、効果が限定的。システム開発

が必要

③生コンは共販制度がある為、仮に 1社がこのシステムを導入していても、急な出荷工場の変

更があった場合には、意味がなくなる。共販(組合全体等)で導入する必要がある。

以上の条件を考えると、i-conの3Dシステムと、本システムの連動こそが、中小土木施工者に

は一番効果があると推察される。

電子伝票や、製品ログデータ、その他施工に関する、製品データと、施工と、検査、納品での

データにリンクでき、かつ、紙ベースのアナログデータをなくし、電子伝票、電子サイン等を導

入する事で、データに相乗的、かつ総合的な価値が生まれて来ると考えられる。

(3)データやシステムの統合で得られる効果と販売戦略のゴール地点とは

(製造者から施工者までが一体となった、生コン総合管理システムとは)

今一番現場での問題点は、「プロ」がだんだんと姿を消しつつある現状に、旧態のままで対応し

きれず、現場が疲弊しきっている事である。監督者のレベルも非常に差があり、現場での打設数

量さえ正確に把握できてない、打設不良の原因すらわからない経験不足の人材で無理やり回して

いる事に遭遇する事も珍しくない。

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それらのしわ寄せが中小の下請け業者に集中する一方で、現状、生コンの施工管理をトータル

で管理できる会社はない。

中小施工者が担う、地方の土木現場等では、i-constructionは大きなビジネスチャンスである

が、まだ始まったばかりであり、様々なトライアンドエラーが続けられているのが現状である。

一番 IoT化に遅れた土木、建築業態の効率化をはかるのが目的なので、改善できる点が非常に多

いところも特徴である。

他業種(製造業)の経験者の視点では、この業界は何も手つかずの状態であり、品質向上、効率

化の効果は非常に大きいのは間違いない。既存のシステムを応用し、組みわせる事で充分大きな

効果が得られるはずで、全く土木、建築業種と関係がないと思われてきた企業との情報共有が絶

対に必要である。彼らも逆にビジネスチャンスがある事に気づいていないとの意見が出るのもう

なずける。

とするならば、今まで専業的に分かれていた、生産者、施工者、圧送業者等が技術力を集結さ

せれば、今までにない、「生コンのプロ組織法人」を発足させ、アウトソーシングが可能となれば、

大きなビジネスチャンスととらえる事が出来る。

それと同じように、本システムを含めた様々なデータを有効に活用する為には、既存の IoT技

術を「持ち寄り」「組み合わせる」、「データを統合」させる事で非常に高い層状効果を得られると

考えられる。

例えば、測量、設計から完成まで、トータルで管理できる新システムに対し、生コン製品情報

等を属性データとしてリンクさせる。

また、生コンポンプ車から得られる筒先情報、(打設位置のデータ化)、打設時間、打設数量、

圧送圧力値等とリンク出来れば、圧送業者にとっても、施工者にとっても、非常に有用なデータ

ベースが作成できる。効率よく、安全に施工する為にもポンプ業者が生コン業者と情報を密に共

有する事は大きな効果を生むことは間違いない。

つまり、骨材の搬入から(生コンの入り口)から、ポンプの筒先(出口)迄を完璧にデータと

して押さえる事が出来るシステムを構築できれば、生コン品質管理総合システムとしてのビジネ

スモデルとして、施工者、発注者、製造者、発注者すべて関係者にとって、システムの存在価値

が大きく倍増する。

これまでは、これらのシステム導入理由として、「施工者」「製造者」が受注の手段としてシス

テムの提供価値対価を支払う事を前提としていたが、最終的に発注者(国、県、市、つまりエン

ドユーザー)自身に利益が生まれるのであれば、その対価を支払うのもエンドユーザーであると

いうスキームが成り立つ(実際ある)わけである。

様々な垣根を超え、人もデータもオールインワンのシステムとして統合し、囲い込むことなく

実運用する事ができれば、本当の意味での生コン総合管理システムができあがり、これこそがス

マートアジテーターシステムの完成形であり、販売戦略のゴールであるとの認識に至ったのであ

る。

6.4. 取付代理店を通じた販売促進とビジネスモデルの確立

(1)取付時間の短縮と安全性向上に関する提案

取付に際し、時間差や、品質差が発生するのは、ベースプレートの取付に関わる工程である。

使用する溶接機や、担当者の習熟度、取付ける車両の状態によって、取付効率が大きく変わる事

が判明した。

日本国内のミキサー車に取り付ける場合、位置的にほぼドラムハッチ部分に取り付けが可能で

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ある。という事は、このハッチを製造する架装メーカーの協力を仰ぐ事が出来、例えば、取付用

のベースプレートが溶接されたハッチをオプションとして購入する事が出来たり、加工済みのハ

ッチを当社で事前準備(販売)したりする事が出来れば、取付作業の時間短縮はもとより、より高

い安全性を確保する事が可能となる。

普及率向上にも寄与する部分であり、今後の課題として、対応を進める必要がある。

(2)今回検証できなかった通信端末の取付及び使用に関する技能習得

今回の実証では、Probeシステムに関する部分の取付、使用方法に関する手順一式を充分に習得

する事ができた。一方、電波法認証作業の遅れから、OBC と呼ばれる通信端末に関する部分の取

付、使用方法に関する手順を確認するに至らなかった。

しかし、その部分を差し置いても、各社は本システムの提供価値に対して、高い評価をし、結果

として、取付代理店としての締結を行うに至った。

OBC 部分等、技術未収得の部分に関しては、国内導入の対応が完了次第、各社に配備し、今回行

った作習習熟度確認表の N/A欄を埋めていく事で、対応を進めていく事とした。

(3)生コン製造事業者にとっての新しいビジネスモデルと IoT技術の関係

販売代理店構築の大きな目的の一つとして、新たに取付等の委託業務行う事で、全く新しい収

入源(ビジネスプラン)を得られるようにしたいという思惑があった。

生コン製造プラントに携わる人員は、生コンの知識は勿論のこと、車両やプラント設備の整備

技術等に長けている事が多い。しかしながら、生コン事業は、90分という範囲の中での商圏であ

り、近辺の経営者との交流はほぼ無いに等しく、必然的にこうした優秀な技術や人材は自社内で

生かすだけに留まっていた。

しかし、これらの技能を他所で生かす事が出来れば、取付代理店業務が生コン販売以外の全く

新しい収入源として確立出来る事になり、我々としても、非常に期待を持っていた。

システムがまだ完成を見ていない現状では、こうした技術や人員の活用事例もまだ当分先の事

だと案じていたところ、ゼネコン社のシステムレンタル事業において、取付代理店 1社から、人

員を派遣する事が内定したのである。

今回の習熟度チェックの中で、一番優秀な技術と機材に対する理解を得ていた、ミツワ生コン

社にオファーしたところ、担当の多田氏を派遣する旨、快諾を得る事が出来た。

これは、生コン事業者において、IoT 技術を用いたビジネスモデル構築が出来る先例となり、

今後普及率が増加するにつれ、ビジネスモデルとしてしっかりと確実に定着していくと思われる

幸先の良い事例となった。こうした事業者や、担当者を増やしていける事が、生コン事業者を取

付代理店として選ぶ大きな理由である事がご理解いただける事例ともいえる。

6.5. アンケート結果に見るセグメント分析結果と今後のマーケティングプラン

アンケート結果からは、本システムへの導入意思が高いセグメントの特長として、地域差はさ

ほどなく、月間出荷量が 5000㎥以上で、保有車両が 20台以上の中堅規模の会社がメインターゲ

ットであるという結果が得られた。

また、そのなかでも IoT技術に興味があり、すでに導入経験があるなど、その効果を実体験し

ている会社程、導入意思が高い傾向にある事も判明した。

つまり、中堅規模以上で、積極的に設備導入を行っている会社が第1セグメントであると言え、

こうした会社に対して、積極的にアピールする事で、初期の導入件数は大きく伸びると考えられ

る。

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一方、第2、第3セグメントと目される中規模以下の会社では、提供価値(省力化や生産性向上

等)をイメージしにくい事から、導入に後ろ向きだと判断でき、いうなれば、この価値を具体的に

提示する事が出来れば、導入が進みやすくなると考えられる。

以上のセグメント化の結果を元に、ターゲット毎に想定される対応内容を【表 36】にまとめた。

期待セグメントにおいては、本システムの提供価値が多岐にわたる点(製造現場から離れた場

所での提供価値を知ってもらう事や、データの販売等、新たなビジネスチャンスに結び付く等)

をアピールしながら、その価値を認知してもらう事が普及へのポイントであると考えられる。し

かしながら、これには限界があると考えらえる。というのも、エンドユーザーである中小施工会

社の見解にあるように、一つの独立したシステムから得られる価値は必然的に限定的となり、中

小規模の企業ではその価値を得るのは難しい面も否めない。

そこで、まずは第1セグメントへの普及を最優先としながら、開発資金を確保し、総合的な生

コン管理システムを構築、販売する事で、中長期計画と捉えながら、複合的に期待セグメント(第

2、第 3セグメント)を取り込んでいくというステップで販路拡大を目指す事が現実的ではないか

との結論に至った。

また、本業界には共販制度があり、会社毎に単独で導入の意思決定が出来ない場合も多い。

この様な場合にも、提供価値を複合的にすればするほど、導入への敷居が低くなる事が予想され

る。

6.6. 海外製無線設備導入における課題

今回、プロジェクトで予定されていた活動の大きな障壁となったのは、スマートアジテーター

システム中の、OBC(オンボードコンピューター)の日本国内電波法準拠対応の遅延である。

これにより、予定されていた検証内容、方法を再検討する必要に迫られた。その主たる原因は、

海外 OBCサプライヤーと、当社及びシステムメーカーとの協力体制構築が非常に困難を極めた事

にある。

ここでは、海外企業とのコラボレーション事業を考える上での課題と今後に向けた対策案を示

す。

(1)通信機器サプライヤーとの連携の重要性

電波を発する製品を日本国内で使用する場合、電波の利用した際の混信等を防止するため、無

線設備は国の定めた技術基準に適合する必要がある事が電波法により定められている。技術基準

【表 36】セグメント毎の対応方法

優先度 ターゲット(セグメント) 分析結果 営業方法

1*【超有望セグメント】  アンケート回答有、かつ導入意欲有りと回答

期待度が非常に高い。すぐにでも営業活動を開始し、速やかな受注が可能

*訪問等の直接的な対応

2*【有望セグメント】  アンケート分析の結果浮かび上がってきた有望セグメント(5,000㎥以上または、保有車両が20台以上)に属する企業

リサーチ必要であるが、期待度は高い受注に向けた積極的なアプローチ期待値は高い

*顧客リスト作成*システム提供価値(省力化・データ販売等)を「導入事例及び効果」として提案資料にまとめる*資料持参等での積極的なアプローチ活動

3*【期待セグメント】  中規模以下の企業(上記第2第3セグメント)

期待度は企業によってかなり差がある知識提供など、提供価値の説明から必要

*顧客リスト作成 規模等でリスト分け*システム提供価値(省力化・データ販売等)を「導入事例及び効果」として提案資料にまとめる。*GNN勉強会、展示会等での広報活動等を行い、ピックアップ活動ののち、訪問*取付代理店を活用した、デモ等の開催

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に反する無線設備を用いた無線局(不法パーソナル無線等)の電波利用は不法開設となり、使用

者は法的な問題が発生してしまう。

その為、一般的には使用する機器に対して、「技術基準適合証明・工事設計認証」や、「基準認

証制度」認証等を取得し、いわゆる「技適マーク」を表示する必要がある。これら認証の申請、

受験作業は、総務大臣の登録を受けた登録証明機関のみが行うことができるが、申請者は、受け

ようとする機材の詳細な内部図面や、現品の提示、テストモード電波の受発信作業等、専門的な

知識と技術が不可欠であり、つまるところ、通信機器のサプライヤー等の協力がないと、申請す

ら難しいのが現状である。

海外製無線設備を国内で使用する場合も同様であり、通信機器を製造する海外企業との密接な

連携が不可欠になる。まず、日本における法規制と認証に伴う手続きについて共有することが重

要である。また、認証には非常に機密度の高い、内部基盤の図面や、テスト用の電波の発信方法

等が必要になるので、これらの取り扱いについて認識を一致させる必要がある。

地理的に離れており言語の違いもあるなか、センシティブな技術情報に基づく認証を取得する

には、これらを踏まえた合意形成が行われていないと、受験の段階になって問題が噴出する可能

性がある。

(2)困難な海外企業との合意形成

プロジェクトのパートナーである米国メーカーは、使用する通信機器をサプライヤーから購入、

使用しているという構造を呈しており、結果的にメーカー側が外注先をコントロールできず遅れ

が拡大していったと考えられる。

外注先の協力が思うように思うように得られなかった原因を以下にまとめた。

・意思疎通(3か国語)によるコミュニケーションの難しさ

もともと Probeシステムの販売を行っていたベンチャー企業は、カナダのフランス語圏に本拠

を置いており、買収先の企業は U.Sで英語圏、かつ、我々は日本語権のなかで、英語を交渉言

語として使用するという、3 か国に渡ってのパートナーシップを築く必要があった。また、時

差も日本とは約 13時間あり、昼夜逆転している中で、メール等でやり取りを行うと、国内対応

の数倍の日数がかかってしまう事が多く、この点で、無駄な時間を費やしてしまった感は否め

ず、そうしたやり取りの中で、細かいニュアンスが伝わり切らずに、誤解を生み、コミュニケ

ーションがうまく行かなかった可能性は否定できない。

・秘匿案件等に対する対応(国民性等の相違)

契約社会と呼ばれるように、U.S の企業は、非常に細かい点までを網羅した契約書を交わす事

で知られている等、、我々の商感覚とは異なる部分も非常に多かった。これらへの対応作業に時間

を費やし、計画通りに予定を勧められなかった可能性も否定できない部分である。

・メーカーの開発リソース(買収時期と優先度)

今回、メーカーでは、本国(アメリカ)仕様の製品統合に向けた開発を急いでおり、電波法認

証作業等への対応が希薄になった期間があった事は事実であった。

また、経営母体が変わった事で、意思決定権がより上部に移行し、正確に我々の意思を上層部

に届けられなかった可能性がある。ベンチャー企業から巨大会社へと移行したパートナーとの関

係性の構築が期間中に上手く構築できずに機能不全となっていた時期があったように感じる。

これらの遠因が絡み合う事で、パートナー会社との合意形成に時間を要し、結果として電波法認

証に関する作業が大幅に遅延したと考えられるのである。

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(3)解決方法

①パートナー企業との良好な関係性の構築

我々はこうした膠着状態を打開すべく、現地のメーカーを訪問し、役員レベルでの会合を持つ

に至った。一番大きな成果は、メーカー関係者(本部、Probe、Five cubits)と当社の役員、担

当者すべてのセクションが一堂に会し、相互理解が進み、方向性の一致を認識できた事に尽きる。

協力メーカーは買収企業の集合体を呈しており、社内でも旧 3社3様の思惑があるので、こうし

た買収統合の大企業と対等にやっていくためには、今までのような、現場=責任者という関係性

のままでは全く意思決定に至らず、役員レベルでの良好な関係性の構築が必要不可欠だという結

論に達した。

もちろん、今回の電波法認証作業遅延の一番大きな理由は、サプライヤーのコントロールがう

まく行かなかった事によるのだが、プロジェクト初期段階(数か月)の遅延の原因はこの「会社

対会社の関係性」を上手くつかむことが出来ず、情報共有、決定のプロセスが上手く動いていな

かった可能性は否定できない。

そうした関係性の構築をいかに確実に、緊密に出来るかを、最重要課題として対応出来れば、

技術的な部分は以下の手法を用いる事で、比較的容易に解決できると考えられる。

②技術的解決方法

通信デバイスは、独自のハードウェアを使用する以上、電波法認証は避けて通れない大きな問

題となる。そこで、次の選択肢で、より早く、確実に問題解決へとつなげられると考えられる。

(a)海外製デバイスの使用は極力避ける

(通信デバイスは特殊な物を避ける。または既存のものとの互換性を考慮して、開発する)

もし、通信デバイスが、特殊環境下に置かれない場合は、国内で流通する一般的な物を使用する

事を第一の選択肢とする。例えば、スマートフォンや、タブレット等のデバイスであるならば、

アプリケーション開発ですみ、リソース削減にも寄与する。

また、特殊環境化で独自のデバイスが必要な場合は、現地で使用される機材と互換性のある、国

内製品を使用できるよう、開発依頼をする事が結局の近道となる。

(b)海外製デバイスを使用する必要がある場合

もしも特定の海外製通信デバイスを使用しなければならない場合は認証取得済みのモジュール

を使用したものか PCIeモジュールのような交換可能の設計をされたものを選択したい。

こうする事で、海外メーカーも多国的な対応が可能となり、開発リソースの低減に結び付く。

その対応も難しい場合は、デバイス全体の認証作業を受けざるを得なくなる。

その際には、専門的な技術、知識が必要不可欠であり、かつ、担当者が試験に立会う必要もあ

る為、認証作業は申請者(技術提供社)の近くにあり、言語が使用可能な機関で受験するのがベ

ストな選択方法である。

結論:どういったデバイスを用いる必要があるのか、充分にパートナー社と充事前協議したう

えで、極力一般的なデバイスを使用した方法を取る事を最重要ポイントして、提案する。

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7. 付録 7.1. 用語説明

用語 説明

打設 建築の基礎となるコンクリートを、枠の中に流しこむこと。打ち込み。

(出展:デジタル大辞泉)

CIM Civil Information Modeling の略 BIMを建造物の建設と捉えて、BIMを橋

や高速道路等の土木の建設に適用したもの。(引用:ウィキペディア)

BIM Building Information Modeling の略 建物のライフサイクルにおいてその

データを構築管理するための行程。典型的には、3 次元のリアルタイム

でダイナミックなモデリングソフトウェアを使用して建物設計および建設

の生産性を向上させる。この行程で BIM データを作成し、そこには建物

形状、空間関係、地理情報、建物部材の数量や特性が含まれる。

(引用:ウィキペディア)

実験用データロガ

データロガー(data logger)とはセンサーにより計測・収集した各種データ

を保存する装置のこと。記録計、データレコーダーとも呼ばれる。

(引用:ウィキペディア)

スランプ測定値 スランプ試験(スランプしけん、Concrete Slump Test)とは、凝固前の生

コンクリート(生コン)の流動性を示す値であるスランプ (slump)、スランプ

値を求める試験のこと。スランプの値が大きくなるほど流動性の高い生

コンクリートである。スランプ試験によって求められ、単位は cm で表す。

スランプはコンクリート打設作業の難易と効率、ワーカビリティー

(workability) を調べる指標になる。スランプ測定値とは、上記の試験方

法で得られた値をさす。(引用:ウィキペディア)

NETIS 登録品 NETIS(新技術情報提供システム)とは、民間企業等により開発された新

技術に係る情報を、共有及び提供するためのデータベースであり、国土

交通省によって運営されている。(New Technology Information System)

の頭文字を取り、ネティスと呼称されている。このデータベースに登録さ

れた新技術は、施工者が公共事業等を落札する際に、技術加点として

利用する事ができる。(引用:ウィキペディア)

TELEC 一般財団法人テレコムエンジニアリングセンターは、元総務省管轄の非

営利団体である。略称は英称の Telecom Engineering Center を略した

TELEC(テレック)。かつては、「日本唯一の指定証明機関」であった。

(引用:ウィキペディア)

VE 提案 VE(Value Engineering)の手法に基づき、製品やサービスの価値をより向

上させる提案を行うこと。VE とは、製品やサービスの価値(V)を、それが

果たすべき機能(F)と要するコスト(C)との関係式、V=F/C で表し、価値(V)

のアップを図る手法である。したがって、機能や品質を維持したままコス

トを下げる、コストを上げずに機能を向上する、といった考えに基づい

て、工程(開発、設計、製造、購買など)での具体的な改善や代替案を提

案すること (引用:Weblio 辞書)

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7.2. 関連 Web サイト GNN Machinery Japan http://gnnmj.com/ GNN(元気な生コンネットワーク) http://genki-namakon.net/ Command Alkon http://www.commandalkon.com/ Five Cubits http://fivecubits.commandalkon.com/

7.3. 別添資料 *検証結果報告書(Probe system共同実験研究会メンバーによる、エンドユーザーにおけるプ

ローブデータの活用方法~~データ購入に関する価格シミュレーションアンケート~~)

*中小土木施工者意見交換会報告書

*取付マニュアル(一部抜粋)SplitProbeシステムの取付手順書 ver1.4

*取付・設定作業報告書

*作習習熟度確認表

*アンケート質問内容

*アンケート調査結果