選れ と採餌 - Osaka City...

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- 48- 選れ と採餌 1) オペ ラント条件づけにもとづく選択行動研究は, 1960 年代の初期, S. M. Autor による並立連鎖スケジューノレの開発に始まり,対応法日Ij (ma tching law) の発見, 乙れにもとづく選択行動の定量化, モデノレ化が進められ,現 在ではオペラント条件づけ研究の故も重要な分野の一つを形成している O 近の選択行動研究の特徴は, 基礎的な問題への組織的な実験的分析ととも に,こ れらのデータを統合するモデル構成の試みが行なわれるーブ J- で,行動 経済学 (behavioraleconomy) と呼ばれる新しい似域の開拓, また, 行動 生態学 (behavioralecology) で問題とされている生物の採何 (foraging) 行動の問題への適用など,広範囲の飢城へ発展しつつある乙とであろう。前 者の試みは,経済学で用いられている諸概念を選択行動の分析に迎用しよう とするものであり,実験科学とは異質である経済学に対し,動物実験による 経済 モデノレの検証などの新しい可能性を提供するという副産物も生み山して いる(たとえば, Rachlin Battalio Kagel & Green 1981) 。後者は,J ミ験 室で行なわれた選択行動研究で開発された方法およひ j 以来を,行動生態学で 問題となっ ている最適採餌 (optimalforaging) 行動の基礎をなす個体の行 動的基盤の解析・に適用し,巡択行動 という 祝点から生物の採 1111 行動を理解し ようとする試み といえる (Lea1981) 。 乙のような試みは,従来,別個に行 なわれてきた実験室内の研究と野外研究とを統合する可能性をもつものであ り,従来の選択行動研究のように実験室を[ 1 1 心に行なわれてきた分野にとっ て, そ乙で蓄おされてきたノ j 法と成果の一般性を評価する機会を提供する と いう点で意義のある接近法といえよう。本稿では,村:: l' ζ後者,行動生態学で 問題とさ れている故泊採餌行動への通用例をとりあげ,現在の選択行動研究 と行動生態学との接点となる諸研究を紹介し乙の新しい研究動向を瞥凡して みる 乙と にする。 ( 802)

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    選れ と採餌1)

    伊 藤 正 人

    オペラント条件づけにもとづく選択行動研究は,1960年代の初期,S. M. Autor による並立連鎖スケジューノレの開発に始まり ,対応法日Ij (ma tching

    law)の発見,乙れにもとづく選択行動の定量化, モデノレ化が進められ,現

    在ではオペラント条件づけ研究の故も重要な分野の一つを形成しているO 以

    近の選択行動研究の特徴は, 基礎的な問題への組織的な実験的分析ととも

    に,これらのデータを統合するモデル構成の試みが行なわれるーブJ-で,行動

    経済学 (behavioraleconomy) と呼ばれる新しい似域の開拓, また, 行動

    生態学 (behavioralecology)で問題とされている生物の採何 (foraging)

    行動の問題への適用など,広範囲の飢城へ発展しつつある乙とであろう。前

    者の試みは,経済学で用いられている諸概念を選択行動の分析に迎用しよう

    とするものであり,実験科学とは異質である経済学に対し,動物実験による

    経済モデノレの検証などの新しい可能性を提供するという副産物も生み山して

    いる(たとえば, Rachlin, Battalio, Kagel & Green, 1981)。後者は,Jミ験室で行なわれた選択行動研究で開発された方法およひj以来を,行動生態学で

    問題となっている最適採餌 (optimalforaging)行動の基礎をなす個体の行

    動的基盤の解析・に適用し,巡択行動という祝点から生物の採1111行動を理解し

    ようとする試みといえる (Lea1981)。 乙のような試みは,従来,別個に行

    なわれてきた実験室内の研究と野外研究とを統合する可能性をもつものであ

    り,従来の選択行動研究のように実験室を[1・1心に行なわれてきた分野にとっ

    て,そ乙で蓄おされてきたノj法と成果の一般性を評価する機会を提供する と

    いう点で意義のある接近法といえよう。本稿では,村::l'ζ後者,行動生態学で

    問題とされている故泊採餌行動への通用例をとりあげ,現在の選択行動研究

    と行動生態学との接点となる諸研究を紹介し乙の新しい研究動向を瞥凡して

    みる 乙と にする。

    ( 802)

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    1 .最適化理論と選択行動モデル

    1-1最適化理論

    動物はアメーパからクジラに至るまで多くの場-合,臼から勤きまわって餌

    を捕らなければならなし、。いつ,ど乙で,どのような餌を,いかなる方法で

    捕るかは生物種によって回定されている側面もあるが,種を構成する個体に

    よって変わりうる側面も存在する。たとえば,夜行性の程では,採餌の時間

    帯が夜間に限定されているとか,ハイ エナが群れて狩猟するのに対して,ネ

    コは単独で狩猟するというのは種によって決められている行動の例である。

    一方,個体が餌の多い場所へ移動したり,ある餌を場合によって捕ったり捕

    らなかったりするという選好の変化などは個体の行動の可変的側面を示すも

    のであろう。個体の採餌行動が可変性をもっといっても,ある条件(環境〉

    下では一定の採餌ノマタンを維持するようになる。乙れは,個体 レベルでいえ

    ば,最も合理的な選択が行なわれた結果といえるであろうし,また,種のレ

    ベソレでいえば,自然選択の結果,ある種をその適所内で最適採餌者たらしめ

    ていると考える 乙とができる〈た とえば,MacArthur & Pianka, 1966)。そ

    して, そ乙で見られる採餌行動のパタンは何らかの意味で合理的な選択とな

    っているはずである。乙のような合理的な生物の選択は, しばしば適応戦略

    と呼ばれている。

    適応戦略と呼ばれる生物の合理的な選択については p最適化理論 (optimal-

    ity theory)という枠組のなかで一つの解釈が与えられているO 乙の乙と

    を,どのような餌を捕るかという問題,すなわち最適な仰の捕り方 (optimal

    diet)を例にとりあげて眺めてみよう。最適な餌の捕り方については, 定性

    的に次の ことが仮定されている (Pyke,Pulliam, & Charnov, 1977)。

    1)採餌者は正味のエネノレギー獲得を最大にしようとする単一目的をもっ。

    2)ある餌がメ ニューに含まれていれば必ず捕食し,含まれていなければ

    捕食しない。

    3)好ましい餌が増加すれば好ましくない餌は捕らなくなる。

    4)ある餌を捕るから捕らないかは, その餌自身の密度に依存せず, 他の

    より好ましい餌の密度に依存する。

    これらの仮定のうち,2)は選択が悉無律的に生じることを怠味し,3)は

    餌の特殊化,4)は餌選択の文脈効果をそれぞれ意味している。

    と乙 ろで, 好ま しい何あるいは好ま しくない伺は,その伺.のもつエネノレギ

    ( 803)

  • - 50-

    一量 (E)と処理(捕獲〉時間 (T)との比 (E/T)によって順序づけら

    れる。そして,最適化理論では, 乙のE/Tを最大にすることが仮定されて

    いるのであるO したがって,乙の場合,適応戦略とは E/Tの最大化と同義

    であり ,とりうる戦時は乙の観点から評価される ζ とになる。上述のような

    定性的な理論に対し, 乙れを定量化する試みも行なわれてきた。たとえば,

    J. R. Krebs, J. T. Erichsen, M. 1. Webber & E. L. Charnov (1977)の研究は定性的理論を定量化する試みの一例であるO 彼らのモデルは, a)採

    nlT-者はエネノレギー摂取を最大にしようとする, b)好ましさの異なる仰を区別する乙とができる, さらに c)餌-はランダムに分布するという 3点が前

    提になっている。いま, 一定時間 (T)採UT}する者を仮定し, 探索時間

    (search time)を Ts,処理時間 (handlingtime)を TA,i蒋自の獲物l乙

    山合う率をん, 出合ったらそれを捕食する確率を P1., その殺物の正味のエ

    ネノレギー量を Ef, ,そしてその獲物の処理に要する時間を hL とすると,時

    間 T で得られる全体のエネノレギー量 (E) は,

    E=TsbんE1.Pt 、EB,,,

    EA

    ,,e,、、

    とな り,処理時間の総計は,

    Th=Ts~À thLPt (2)

    である。乙れから正味のエネノレギー摂取率 (netrate of energy intake)

    は,

    E Ts~À1.EtP1. T - Ts+Ts戸んh1.Pt

    したがって,

    E_ ~んEtPLT- -1+~んtiipt(4)

    としてあらわせるO また E/Tを故大にしようとすれば, 獲物Cは

    E '" E+えcEcPcT Y T+Ache Pc (5)

    のとき無視される。ただし,獲物Cが捕獲される政本は Pc=Oあるいは

    Pc=1.0とする。

    簡単のために 2穏の獲物を捕獲する場合を考えてみよう。いま両ノjの獲物

    を捕獲した とすると,(4)式から,

    (3)

    hu

    E一λ

    、A一-

    +一h

    -τ向川中一

    +

    a

    一1ょ

    一一E一T

    (6)

    ( 804: )

  • -園.

    -

    選択と採餌 - 51ー

    となる。好ましい獲物を 1であらわし,EjTを最大化すると とを 考えてみ

    る。乙のためには,もし(7)式が成立するときは 1のみを捕獲し, 2を無:制す

    ればよい乙とになる。

    えlE1 "" AlEt+んE21+えthl "., 1+えthl+え2h2 (7)

    すなわち,左辺は 1のみを捕獲したときの単位時間あたりのエネノレギー量,

    右辺は 1と2の両者を捕獲したときの単位時間あたりのエネノレギー量をあら

    わしている。したがって, (7)式はより好ましい獲物のみを捕獲するか,好ま

    しい獲物も好ましくない獲物もともに捕獲するか否かを決める選択基準.とい

    えよう。 (7)式を書換えると

    1 _/ E ;1 < E:h2-h1 (8)

    となる。 1/んは獲物 1~r 出合う平均時間である。 (8) 式は,ん を含んでいないので,好ましくない獲物が捕獲されるか否かは, その出現率 (A2) にはよ

    らず,より好ましい獲物の出現率 (At) によって決められる乙とを示す。つ

    まり, 餌の摂取の文脈効果を予測するものといえる。いずれにせよ, (5)式

    あるいは (7)式が示すように, 最適化理論では, 獲物の選択は単位時間あた

    りのエネノレギー 量を最大化する過程と考えられているのである (Krebs& Davies, 1981)。

    1-2 選択行動モデノレ

    心理学の分野では, 乙乙 20数年間にオペラント条件づけにもとづく選

    択行動研究は飛躍的な進展を示してきた (deVilliers, 1977; Fantino & Navarick,1974)。 乙の問に開発された研究ノJ法や苔引された実験的事尖を

    行動生態学で問題とされている最適採餌行動の解析へ迎用する乙とは,idj必

    採餌行動の械制あるいは最適採餌行動の法礎となる個体の行動的若盤をIYJら

    かにするという点,また笑験室をr:IJ心lζ進められてきた引在の選択行動研究

    の有効性を評価する機会を提供するという点から興味ある問題といえよう。

    そ乙で,まず最初に従来の選択行動研究の成果を概観したのち,次に具体的

    な採餌行動への適用例に触れる乙とにする。選択行動研究の現況については

    別の機会に概観した乙とがある(伊藤,1983)ので, ζ 乙では附単にまとめ

    てみる乙とにしよう。

    オペ ラント条件づけを法織とした選択行動研究では,ごとに,並立 (con-

    current) スケジューノレと放,'(.J1!鎖 (concurren t-chains)スケジューノレを川

    (805 )

  • - 52-

    いた選択場面が開発されてきた。 いずれも二者択一的な選択場面を基本とす

    るが,最近では選択肢が 2個以上の多肢選択場面も構成されている 〈たと

    えば,Catania, 1980; Fantino & Dunn, 1983)。一般に,選択さるべき対象

    は何らかの強化事象(た とえば, 強化率, 強化量, 強化の遅延時間など)

    の値で,乙 れは反応用 キイ あるいは レバーなどにより構成された選択肢に

    設定される。特に, 並立連鎖スケジューノレでは, 選択の対象が第 2リンク

    (terminal link)に設定され, 第 1リンク (initiallink)での反応が選択

    反応となるO 乙のため,第 1リンクの選択反応と第 2リンクの強化事象への

    反応とが操作的に分離できる利点がある。

    Autor (1969)2)は並立連鎖スケジューノレによ る選択場面でハ トに 強化率

    の異なる選択肢を選択させたと乙 ろ,第 1リンクの選択反応は第 2リンクの

    強化率の変化に対応して変化する乙とを見出した。すなわち,乙 の関係は,

    (9)式のよう に,第 1リンクでの相対反応率 (R1/[R1+ R2]) が第 2リンク

    での相対強化率 (r1/[r1+r2]) と一致する乙とを示し, 現在では対応法ftlj

    (matching law)と呼ばれている。

    Rl r1 R1+R2 - r1+r2

    (9)

    ただし, Rは反応率, rは強化率をあらわすO その後, (9)式の関係は,強

    化の遅延時間, 強化量などの次元においても見出され, またノ¥ト以外にも

    ラット, サノレ, ヒトにおいても成立する ことが認められている。 また, (9)

    式の一般化の試みが w.M. Baum (1974)によって行なわれ, 過小対応(undermatching) ,過大対応(overmatching)とバイアスの区別など, 経

    験法則としての(9)式の精激化が進展した。一方(9)式にもとづいた選択モデノレ

    の定式化の試みも R.J. Herrnstein (1970, 1974)によって,また別個の観

    点から, E. Fantino (1969), P. R. Killeen (1982)などによって行なわれて

    きた。乙こでは,選択モデノレとして,並立連鎖スケジュールによる選択場面

    を考慮した代遅延低減 (delayreduction)"モデノレ (Fantino,1969)をとり

    あげてみよう。乙のモデノレは現在までに,並立連鎖スケジューノレによる一般

    的な選択場面での拡張 (Fantino& Davison, 1983; Fantino & Dunn, 1983)

    のみならず, セルフ・コントローノレの問題 (Ito& Asaki, 1982; Navarick

    & Fantino, 1976), 観察反応の問題 (Case& Fantino, 1981),誘発反応の

    分析 (Fantino, 1981), さらに採餌行動の実験室シミュレーションの問題

    (Abarca & Fantino, 1982)などの広範囲な飢域への適用が試みられ,予測

    ( 806)

  • ,・帽・.

    選択と採餌 - 53 --

    力という点で現在最も有効な選択行動モデノレのーっといってよい。

    遅延低減モデノレは,並立述鎖スケジュ ーノレの第 1リンクから第 2リンクで

    の強化子呈示までの平均時間 (T)と第 2リンク の長さ(t )との関係,す

    なわち第2リンクへの移行にと もな ってTをどの脱皮低減 (T-t)するか

    により選択が決定される乙とを示す。 (lO式は遅延低減モデノレのうちの故も車

    p

    h

    ah同

    • --0# 、

    • R1 -T-t1

    R1 +R2一(T-t1)+(Tーら)

    =1

    t1

  • - 54ー

    なる。 したがって, 採餌のj也泌戦略として EjT を紋大化するという乙と

    は,乙の場面では強化率を最大化する乙とにほかならない4)。 乙のように最

    適化理論と遅延低減モデノレとは,理論の構成において共通の側面をもつもの

    といえ, そのため乙の両者の予測は多くの点で一致することになるのであ

    る。また,上述の理論面の類似性ばかりではなく ,経験的レベノレでも,最近

    の選択行動研究で,強化量と強化の遅延時間という 2次元の相互作用の分析

    (Green & Snyderman, 1980; Ito & Asaki, 1982; Snyderman, 1983)がセノレフ ・コントローノレの問題を解く錠として重要視されている乙となど,従

    来月IJ個に行なわれてきた選択行動研究と最適採餌行動の研究が共通な基盤を

    もつことを示している。

    2.採餌行動の実験室シミュレーション

    前節で述べた最適化理論の予測は, 野外観察あるいは臼然環境の一部を

    再現した実験室シミュレーションという方法で検討されてきた〈たとえば,

    Goss-Custard, 1977; Krebs, Erichsen,羽Tebber& Charnov, 1977)が,

    オペラント条件づけに立脚した実験室シミュレーションの試みもかなり有

    効なノj法である 乙とが|児らかにされている(たとえば}Abarca & Fantino,

    1982; Collier & Rovee-Collier, 1981; Lea, 1979)。乙の方面の最初の試み

    は S.E. G. Lea (1979)によって行なわれた実験である。彼は採餌行動を

    いくつかの構成要素にわけ, 餌をさがす探索事態, 出会ったfillを捕るか否

    かを決める選択事態, さらに捕ると決めた後の処理事態の三つの部分から

    なるものと考え,乙 れらに対応する一種の継時選択場面を構成した。図 1は

    これをフローチャートとして記述したものである。まず,探索事態で左側の

    キイヘ反応すると定間隔 (FI)スケジ ューノレにより 2磁の仰の一方を示す刺

    激(亦または緑色光〉が右側キイ 上に呈示される(選択事態)。乙 乙で 1回

    右側キイ へ反応すると処理事態へ移行し, 左側キイの白色光が消え FIス

    ケジューノレにより餌が 2.5秒間呈示された後, 再び探衆評態へもどる。も

    し選択's=態で左側 キイで 3回反応するか, 4096秒間いずれのキイに対しで

    も無反応の ときは探紫F態へもどる。 2種のulT-は処理事態の長さの相違 (FI5秒と FI20秒〉として定義され, 探索事態の FIの値がこの 2種の餌の

    全体的な省皮を決める ことになるO 検i吋された問題の一つは,全体的な餌の

    密度が変化したときに, 好ましくない餌 (FI20秒〉の捕獲率がどのように

    (808 )

  • -F

    ,'、

    選択と採餌 - 55一

    の 。3 centre key pecks or 4096 secs

    3 centre

    key pecks

    or 4096secs

    CHOICE CHOICE

    、. ., O~砂 O@ 1 stde

    dy b key peck

    ‘-

    HANDLlNG

    • Fl Sh Ide secs FI hSsecs

    key 't' Slde key 円EWARD REWARD

    ELsecs . ,

    d secs DETENTION

    O~ゆ⑧ 図1.Lea (19i9) によ り用いられた探餌行動のシミュレーション月jノログラムのフローチャート。

    whlte red green dark

    変化するかという前節で述べた餌の特殊化の問題である。との結果,被験体

    として用いたハ トの好ましくない餌の捕獲率は仰の全体的な続度の低下とと

    もに増加すること,逆にいえば,餌の全体的な街度の増加とともに好ましく

    ない仰は捕らなくなる乙とがjFUllされ, fbt過-化理論の予測の (3), すなわち

    仰の特殊化が支持されたといえる O しかし, 好ましくない餌の捕獲率の変

    化は, i成過化理u命が予測するような忍無律的には生じない乙とも見出され

    た。

    Lea (1979)の尖験は雌かにオペラント条件づけにもとづく場市構成が有

    効 な手段となる乙とを示すものであるが,選択事態で,捕獲しないととへの

    侃好が強く n忍められたととから一部方法上の問題が指摘される。まず,処理

    ~jJ態 ~r FI スケジュ ー ノレを川いていることである。一般~r , 並立述鎖スケジ

    ューノレKよる選択j局面では第 2リンクが FIスケジューノレを用いた;場合,対

    応法則が成立しない乙と, すなわち短い FIスケジューノレへの偏好が生じる

    ζ とが 見出されているからである (Herrnstein,1964入また, 選択事態で

    (809 )

  • - 56ー

    の捕獲する ζ とと捕獲しない乙との操作上の不均衡(捕獲しない場合,左側

    ヘ3回反応,一方捕獲する場合は右側へ 1回反応)もあげられるO

    N. Abarca & Fantino (1982)はこれらの問題点を改良した手続きにより

    ハトの採餌行動におよぼす全体的な餌の密度の効果を検討した。方法上の変

    更点は,主に,選択事態で餌を捕るか捕らぬかはいずれも 3回の反応とした

    乙とと, 処理事態の長さを変間隔 (VI)スケジューノレとした乙とである。 2

    種の餌は Leaと同様に処理事態の長さの相違 (VI5秒と VI20秒〉として

    定義されているO 乙の研究でも,やはり全体的な餌の密度が増加すると処理

    事態の長い餌〈好ましくない餌)は捕らなくなるという餌の特殊化の事実が

    見出された。 さらに重要な ζ とは,VI 20秒の餌の捕獲〉千三.が5096を越える探

    索事態の FIの値が段適化理論および遅延低減モデノレから予測されるのr1(FI

    7.5秒)と ほぼ一致した乙とである(図 2)。

    最適化理論によると,探索時間がFI7.5秒の場合, 2析の伺:を両者とも捕

    るときと,好ま しい餌 (VI5秒)のみを捕るときで 1回の餌を得るまでの平

    均時間が等し くなるのである。つまり ,両者とも捕る場介の餌を得るまでの

    平均時間は, 7. 5 + 0 . 5 x 5 + 0 . 5 x 20 == 20秒,一方好ましい仰のみを捕るj必合

    には,15+5==20秒となるからである。

    遅延低減モデノレも,両者をともに捕ったときのTの値は7.5+0.5x5+0.5

    x 20==20秒,好ましい餌のみを捕る場合も15+5 ==20秒で好ましくない餌を

    捕っても餌を得るまでの平均時閣を低減する ζ とがない。乙のときの探索時

    間よりも長いととろでは好ましい餌のみを捕ると Tが両者を捕るときにくら

    べて大きくなるので好ましくない餌も捕るようになり ,ーノ7探糸口寺間の短い

    ところでは逆に好ましい餌のみを捕ったノjがTの値は小さくなり,好ましく

    ない餌は捕らなくなるといえるのである。そして,遅延低減モデノレでは好ま

    しくない1mの捕獲2F.の変化が,故迫化理論から予測される悉無作1'8なものではなく確率的なものである乙とを予測するが,乙れは図 2~(ぶされたデー タ

    から支持されている。

    餌の特殊化と呼ばれる偏好の問地-はラットを被験休とした G.H. Collier

    & C. K. Rovee-Collier(1981)の研究でもよよfliされている。彼らのJlJいた夫

    験場面そのものは |二記の Abarca& Fantino (1982)や Lea(1979)のj易,fii 構成とは史-なるが,継時選択という点では同級の場面といえる。異なる点は

    ラットが,探索用レバーと捕獲用レバーを設けた実験箱内に24時間厄t住して

    いた乙とであるo 乙乙では, 2科:の何は捕獲レバーでの定比率(FR)強化ス

    ( 810)

  • - 57-選択と係餌

    一一一一一一一一一一一一一一8・68*

    63 10 25

    FIXED INTERVAL (SEC)

    8-55・

    MEAN 8・58.8・570

    8・678-59

    40

    9

    8

    6

    3

    n

    v

    ?

    '

    ζ.

    一〉。zoJOZ一↑仏凶υυdLO〉LF

    一」一∞《∞O庄内比

    5

    4

    :の変

    -

    mNは幻

    ω

    H

    hw宇ズ

    住地叩円引

    7AHU

    0 16

    図2 傑来事態で用いられた FIスケ ジュールの関数としての好ましくない餌の捕獲率 (Abarca& Fantino. 1982)。災線は平均他を示す。

    F,TVT

    t

    U

    での

    ケジューノレの仙の~11~ としてがとめられていた (FR5と FR50または FR

    100)。また, 2施の伺の全体的な宿皮に代わるものとして探鉛レバーで必要

    とする反応数, つまり コストが川いられた。ラ ッ トは,探察レバーで~求さ

    れる反応数が FR5から FR100へJ1Y/jJf Iするにつれ,それまで FR5の仰の

    みで,ほとんど捕らなかった FR50 (または FR100)の餌を捕るようになる

    .

    ,h,u

    AHHU

    tfuv-

    LH

    ~

    乙乙では .

    乙と, 1負 ts-すれば, 探'~ ~ζ要するコストが低ければ餌の特殊化が生じること

    が凡出されたのである。しかも乙の選好の変化はやはり碓率的であった。

    J二述の Abarca& Fantino (1982)の研究は,従来の選択行動研究で用い

    られている際派的な強化スケジューノレを適用する乙とで,採餌行動のシミュ

    レーション伺-先に新しいノj向を開拓したものといえる。このノjl白.の.gl在までの成果の概2Mは Fantino,Abarca & Ito (1983)で惚(itされたが,

    λ;発Aデータもまじえて研究の進展を眺めてみる乙とにしよう。Abarca (1982)は,Lea (1979)の開発した採例スケジューノレではなく,

    故立述鎖スケジュールによる選択場面で,uf1:場(ノマッチ)悶の移動の問題,

    また,好ましい何あるいは好ましくない仰のそれぞれ独立な密度の変化の問

    題を取扱ったものである。乙の選択場而は基本的には並立連鎖スケジューノレ

    にも とづくものであるが,継時選択という点が異なっている。 3個の反応用

    キイ からなる選択j坊市を構成し, r~]央キ イを切諮反応用 キイ, 左右のキイを

    ,・・a'A訪LV

    'l

    !.i 品

    (811 )

  • - 58-

    選択肢キイとした。最初に,中央キイに白色,左右いずれかに VI5秒また

    は VI20秒で与えられる餌を表示する緑色あるいは赤色光が点灯する(選

    択事態〉。ハ トが緑色あるいは赤色のキイ をつつくと VI60秒のスケジュ

    ーノレにより処理事態ヘ移行し, 乙乙では各餌を定義する VIスケジュ ーノレ

    (VI5秒と VI20秒あるいは VI30秒 と VI60秒)により強化される。一方,

    中央キイ への反応は左右の選択肢キイの色光を消し,他方のノマッチへ代移動

    中"の状態になる。 乙の移動時間は FIスケジューノレの値により決められ

    る。

    パッチ問の移動は切答反応後の強化遅延(COD)の長さとして定義されてい

    るが,乙れは上述のように FIスケジューノレを用い,乙の値が O秒, 4秒,

    16秒の 3条件を設けた。乙の結果,CODが長くなると,VI 5秒(または VI

    30秒〉の餌へのハ トの選好の程度は減少することが見山された。すなわち?

    移動時間が短くなれば餌の全体的密度の場介と同様に餌のとりメjが選択的に

    なる乙と(餌の特殊化)を示したのである。

    -}j,好ましい餌と好ましくない餌の密度の変化の効果については,同じ

    場面で検討されたが,各餌の密度は選択事態の VIスケジューノレにより独I

    K決められた。一方の餌の密度が上昇する場合と減少する場合で比較したと

    乙ろ, 好ましい餌の街度が変化したときは好ましい餌の選択率という測度

    で大きな効果を見出した。 しかし, 好ましくない餌の密度の変化は, 増加

    する場合と減少する湯介とで異なり一貫した傾向が見出せなかった。最適化

    理論では,好ましい餌と好ましくない餌の密度の効果は等価ではなく ,好ま

    しい餌の密度がより大きな効果をもっ乙を予測する(最適化理論の予測の

    (3), すなわち文脈効果)。一方, 遅延低減 モデノレでも同じ効果を予測する

    が, 椋准的な並立連鎖スケジューノレを用いた Davison(1976)の実験から

    も乙の予測は支持されているO 一般に,好ま しい餌のi密度の効果は,実験計

    シミュ レー ション (Krebs,et al., 1977; Lea, 1979)でも野外観察 (Goss-

    Custard, 1977)でも認められている。一方, 好ましくない餌のi密度の効果

    は,一部その効果を見出した研究 (Goss・Custard,1977)もあるが,現状で

    は明確とはいえない。上述の Abarca(1982)の実験では,好ましくない仰

    の密度の効果が明確に認められなかった理由 として, むしろ好ま しい餌と好

    ましくない餌との中聞に位芭づけられたためである とい う解釈を提出してい

    るが,今後の検討を要する問題であろう。

    ノマッチ問の移動時間の問題は,放なスケ ジューノレによる選択脇市iでも検li、I

    ( 812)

  • 選択と採餌 - 59ー

    されている。 Baum (1982)は二つの選択肢を, 衝立てとハー ドノレとで物

    理的K隔離するととで移動時聞を操作したが, 衝立が長くなりかつハー ド

    ノレが高くなるにつれて,切住反応(移動)の生起頗皮が減少するとともに,

    好ましい餌の選択で容が増加するという, 七述の Abarca (1982) とは異な

    る結雫を見出した。一般iζ, 並立スケジュールによる選択場面では,COD

    あるいは切替lζ要する反応欽 (COR)の増加とともに相対選択反応と相対強

    化との間には対応あるいは過大対応が生じ,-)i CODあるいは CORが減

    少すると逆に過小対応が生ずることが知られている (Dunn,1982; Pliskoff

    & Fetterman, 1981)。この給取のくし,、ちがいは,多分用いられた選択場面の

    相違K帰せられるであろう。たとえば,並R述鎖スケジューノレで第 1リンク

    に長く滞在するとすれば, Tの値は大きくなり, したがって選択率は 0.5

    K近づく ζ とになるからである。実際,Abarca (1982)では CODが長く なる

    と第 1リンクでの滞在日寺市jも長くなる乙とが見出されている。 また,Baum

    ο982)の物理的隔離, Dunn(1982)や Pliskoff& Fetterman (1981) ら

    の COD あるいは CORの催{と Abarca(1982)の用いた FIスケ ジューノレ

    の値との対応関係、が明確ではなし、。 Baumの笑験では最大の物理的隔離でも

    移動時間は 4--5秒であり ,Abarcaのff.]し、た FI16秒とは大きな相逃があ

    ることも指摘しておかなければならなし、。

    伊藤と Fantino(1983)の研究は,先の Abarca& Fantino (1982)の用い

    たシミュレーションのブ5"訟で,探察n寺間あるいは処理時間の効果をハ トを被

    験体として組織的iζ検討したものであり,乙の場面iの採餌行動の分析をより

    一局深化させたものといえる。 l~ 3はffj~、た手続きをフローチャートであ ら

    @

    3015

    FR 3 OR

    30SEC

    @Ol&

    m伺

    川市①

    竺~ t SEC

    図3 伊j朕と Fantino (1983)により月j

    いられた係餌シ ミュレーシ 訂ンの手続

    きのア ローチャート 。

    (813 )

  • - 60-

    HANDllNG STATE: V 15 HANDllNG STATE: VI20 α= 100「2 品 r- A , , I ー 。トー @ (児)α=

    Cコ UA コ=α=cn・・ a

    4‘ ιコHα= CコoI , I I I

    /

    ‘ ι32 2I , I 《包 50E2 IIIo

    8EE 《 ロ=トー=コZCJ IIJ ιコα= 11 •

    。ー

    • 。G54 。 oY39 d Y25 d(l93 ロY36 ロY37.Y20 .:G29 A Y29 AY18 。 ロ

    5 30 5 30

    VI VAlUES IN SEARCH STATE • 図4 探索事態の VIスケジューノレの関数としての好ましくない餌の捕

    獲率の変化〈伊藤 ・Fantino, 1983)。左側のノマネノレは処理事態が短い場合 (VI5秒),右側のパネ ノレは長い場合 (VI20秒〉を示す。 図中

    の実線は平均値を示す。

    わしたものであるが,先の Abarca& Fantino (1982)と異なる点は,餌の

    タイプとして強化量の異なる餌を用いた乙とである。強化量は餌の呈示時間

    で操作し, 2秒と 6秒または 3秒と 6秒の組合せとした。まず,乙の 2種の

    餌に対して探索事態の VIスケジューノレによって決められる全体的な餌の密度の効果を異なる処理時間の条件で検討した。図 4は2つの異なる探索時

    間(餌の密度〉に対して処理時間が長い場合 (VI20秒)と短い場合 (VI5秒)とで, 好ましくない餌 (3秒間呈示)の捕獲率が異なることを示した

    ものである。すなわち,餌の全体的密度が高いとき(探索事態が VI5秒〉

    に生ずる餌の特殊化は,処理時間の長い場合により明確に認められる ζ とか

    ら処理時聞によっても変わりうる乙とが示されたといえる。また,図 5は乙

    の事実を個体内再現という方法で示したものであるO 処理時間が長いとき

    は,好ましくない餌の捕獲率が低くなるという餌の特殊化がどの個休でも一

    貫して認められる。

    (814 )

  • ∞別

    O

    Z凶(〕匡{〕比一三凶巴

    20一LFd

    丸信コロ

    巴凶・

    FZ{〕ヱ

    ω比{〕凶(〕

    Z《ト仏凶(〕

    ω《ト

    Z凶()匡凶仏

    選択と係餌 - 61-

    G93 Y39

    図 5 処理'釘患の VIスケジューノレ

    の関数としての好ましくない餌の

    捕獲率の変化〈伊必 ・Fantino,1983)。 傑索事態は VI5秒であ

    るο

    !よtiUの探索JI!j間の効果は,Ufr.のサイズの組介せが災なるi必介にはどうなる

    であろうか?図 6は探索時間すなわち(全体的な仰の浴皮)の効果を餌のサ

    イズの異なる 2条件で比鮫したものであるO 一部の例休 (G54と Y25)で

    は2条件のもとで探察時間の効果が比較検討された。一般に,前のサイズの

    組合せの比が小さい場介 (3秒と 6秒間呈示)には,好ましくない餌の捕獲

    率が相対的に高い乙とが凡iiiされた。乙の乙とは,同条件のもとで比較され

    たG 54とY 25のデータによく示されている。

    乙乙で,これらの条件で好ましくない仰の捕獲率が50foを魅える探定時n'dの長さを遅延低減モデノレと以-j庖化JTfL論の両者から予測し,乙れとデータとの

    適合度を調べてみることにしよう。まず, 3秒と 6秒のJ必合には, VI10秒

    のとき,好ましくない餌の捕獲率が50;ちを越える。故適化理論では,好まし

    い餌と好ましくない餌の両者を捕ると,餌を作るまでの平均時間は 10+ 10

    +10=30秒,餌の平均呈示時間は 4.5秒で,したがって E/Tは 4.5/30=0.15

    となる。 好ましくない餌をおりらないときは,仰をねるまでの平均時間は20+

    20=40秒, 仰の呈示時間は 6秒であるから E/T は 6/40=0.15となるから

    である O ーブJ-遅延低減モデノレでも, 前者-の以-介 T:x:10 + 10 + 20=40秒であ

    り,また後者でも,T = 20 + 20 = 40Aj)となって,好ましくない餌を捕っても

    捕らなくても, TのイLf(は変わらないことから選択率は50もとなるのである。

    2秒と 6秒の場介も同様に,いずれのモデノレでも, VI 20秒のとき,好まし

    くない仰の捕獲率が50匂を越える乙とになる。似16から好ましくない餌 (2

    秒間あるいは 3秒間呈示)の捕獲率が5096を越える探索引:態の VIの値を求

    めると, 3秒と 6秒のときは VI9~10秒 , 2秒と 611、のときは VI22~23

    (815 )

    '.Y37

    VI20 VI5 VI20

  • - 62-

    3vs6SEC 2vs6SEC a:: loor マ lR r- • 1 J J 。トー (児)ト 。α= Cココこα=Cのい'

    乙.:J 。Hα=-Cコo11_jU , ト • 乙:JZ マ2I f J ロ

  • - 63-

    MEAN

    Yll

    ノノ

    /ノ

    /

    選択と採餌

    60 70 20 30 40 60 70 90 20 30 40

    V 1 VALUES I N HANDLING STATE

    R73

    Y46

    50r骨----/一一一一一

    R71

    Y8

    5m--一ーー

    ー、J一

    削川

    ωω匡

    Ou-z一ω巴

    20一ト《匡コロ区一以ト巴

    oz…

    山口町

    O

    凶(〕

    Z《LFL一ωωω《し戸

    Z円〕匡一ω仏

    図7 好ましい餌{ζ対応する処理事態の VIスケジュールの関数としての好

    ましくない餌の捕獲率の変化 (Ito& Fantino, 1984)。好ましくない餌に対応する処理事態は VI20秒で一定である。白丸 (0)は上昇系列, 黒丸

    CO) は下降系列による VIスケジュールの変化を示す。 グノレープデー

    タはこの両者の平均値を示したものである。

    点からも興味ある問題なのである。 Ito& Fantino (1984)は,二つの餌の

    間の等価性を抗心測定することによって乙の問題に符えようとしたものであ

    る。探案事態は VI5秒とし) 2 秒間のfi1~呈示に刻応する処理事態の長さを

    常に VI20秒で一定とした。そして) 6秒間の1m呈示のある処理事態の長さ

    を VI20秒から10秒ステッフ。で地加させ, 短い餌:(2秒間呈示)の捕獲率が

    5006を結えると きの長い餌(6秒間呈示〉に対応した VIの値,すなわち等-

    価点、を求めた。 VIの値を 5セッションづっ10秒ステップで増加させた後,

    どちらの何も10000捕る VIの値 (Y11を除く)から, 逆に10秒ステッフ。で減

    少させ,同一個体内で上昇系列と下降系列による VIの値の変化を経験させ

    た。 図 7は各個体(ハト〉旬に, 好ましくない何 (2秒間呈示)の捕獲率を

    縦軸に,好ま しい飢(6 秒間主ノJ~) の VI の値を綿布lH乙プロ ッ トしたもので

    C 817)

  • - 64-

    ある O 何体毎に特徴的なノマタンを示しているが,上昇系列でも下降系列でも

    かなりの ヒステリシス (hysteresis)効果が認められた。 グノレープデータか

    らは好ましくない餌の捕獲率が5096を越えるときの好ましい飢の VIの値は

    およそ33秒付近であると推定できる。 乙の乙と (2/20キ6/33)は,以適化理

    論で仮定された等価性 (2/20=6/60)とは一致しない乙とを示している5)。

    ーブj,遅延低減モデノレにも とづ、いて,好ましくない餌の捕獲率が5096を越

    えるときの好ましい餌に対応した VIの値を求めてみると,好ましくない餌

    に対応した VIの値は20秒であるからT=20秒のときに,好ましくない餌の

    捕獲率は 0.5となるはずである。 T= 20 = 5 + 0 . 5 x 20 + XであるからX=5秒となるが, これは 0.5xl0=5秒なので VIの値は 10秒ということにな

    る。いま餌は強化量で定義されているが,遅延低減モデノレでは強化量のパラ

    メータを陽に合んでいないので, 何らかの形で強化量を遅延1時間へ変換する

    必要があるO 乙乙では,Navarick & Fantino (1976)にもとづく変換方法6)を適用する と, 好ましい餌に対応した VIの実際の値は 3x 10=30秒と

    なる。 乙れから,好ましい餌に対応する処理時間が VI30秒,好ましくない

    餌に対応する処理時間が VI20秒のとき ,好ましくない伺の捕獲率は 0.5に

    なるのであるO 乙の値は図 9から推定された VI33秒とほぼ一致するもりと

    いえよう。

    乙のように餌の評価基準である E/Tが必ずしも成立 しないJ易合のあるこ

    とは,選択行動研究ではすでに知られている事実(たとえば,Ito & Asaki, 1982)であるが, 最適化理論に とっては主要な意味をもっといえるであろ

    う。今後,どのような場合に E/Tが成立あるいは成立しないかをより詳細

    に吟味する研究が必要であろうし,また 乙れにより故迎化理論そのものの修

    正が問題となるであろう。

    3.総括

    以上,本稿ではオペ ラント条件づけにもとづく実験室シミュレーショ ン研

    究の進展を眺めてきたが,乙 のブ~. illiの研究はまだ少数であり,多くの問題が

    残されている。 しかし,技されている問題が多いとはし、ぇ,第 2節で眺めて

    きたよう にかなりの成果をあげつつある こと も事実であり,こ のようなは:近

    法が有効である 乙とを示唆しているもの と考えられる。

    個体の採伺行動に関与する要因は,第2節でJ放った採宗時間,処理時間,

    ( 818)

    J

    〆.

    4・F

  • 選択と採餌 - 65一

    餌のサイ ズだけではなく ,思いつくままにあげてみると,乙れまでの研究で

    は考慮されなかった係餌の確率的な側面,たとえば捕獲しようとしてとり逃

    がすこと もあるように,餌が実際に捕れるか否かは確率的と考えられる乙と

    である。また,パッチ状の餌場を考えるにしても,乙のなかの餌の分布状態

    は峨々なものが考えられる。餌の分布状態によって生物のとりうる戦略も変

    わるであろう 7)。採餌行動に関与する訟も法本的な要因は,個体の動因レベ

    ノレであろう。乙の要臥|が他の要閃とどのように関辿しているかは採餌行動の

    解明には欠かせない問題と思われる。さらに,個体のillJJ閃レベノレとも関述す

    るが,採餌行動がどのような食物環境〈システム)8)で行なわれるのかは,や

    はり採餌行動に関与する要因であろう。

    ーブJ,方法論という点から眺めるとまたいくつかの問題点があげられる。

    たとえば,ハ トを被験体した場合には,何種知かの穀物の入った餌箱の一定

    時間呈示で餌 (prey)が定義されているが, 野外の採餌行動ではある穀物

    1粒が餌としての対象なのである。また, 上iliの食物環境の問題に関わる

    が,一般に,実験宅シミュレーションの多くは,実験セッション以外に餌を

    ホームケージで供給していることである。食物環境の問題との関連で、実験ブj

    法を検討する必要があるように思われる。パッチ間の移動のシミュレーショ

    ンとして, 実際に物理的距縦をとるのではなく , CODや CORが用いられ

    ている乙 とは第 2ui1で述べた通りである。しかし,このような時間あるいは

    反応数〈乙れに要する時間)を物理的距離の移動と等価と考-えてよいかは問

    題であろう。実際に, 物理的距離の移動と時間との対応関係を明らかにす

    る乙 とが,こ のような形の移動のシミュレーションの前提と,思われる。

    いずれにせよ,すでに手がけられた問題はもちろん,上iliの残されている

    問題についても,第 2節で眺めてきた方法あるいは新たに開発した方法によ

    り組織的な検討を加え,選択行動という視点から採伺行動の包括的な理解を

    深化させる乙とが必要であろう。

    1)本研究の一部は昭和57年度文部省科学研究費〈一般研究 (A),課題番号57410004

    研究代表者明星大学小川隆〉によった。

    2)乙れは1960年ハーバード大学へ提出 した彼の学位論文を公表したものである。3)理論的選択率の求め方を具体例 をあげて説明してみよう。いま第1リンクの長さ

    を t1,第 2リンクの長さを t2 とする。左右の選択肢を L,Rであらわせば,第1リンクの 平均時間は 1/(ljtlL + 1jtlR) となる。第 2リンクの 平均時間は Pt2R+(l-P) t2Lとなる。 ただしPは右側の選択肢で第2リンクへ移行する確率を示す。

    (819 )

  • - 66-

    P=tlL/ (tlL +tlR)である。 したがって T=1/(1/tlL+1/tlR)+Pt2R+ (1-P)t2しとなる。

    ( 1 ) 第1リンクの長さが左右等しい場合。

    第 1リンクはともに VI600秒,第2リンク右側 VI30秒,左側 VI90秒とする。

    T= 1/ (1/600+ 1/600) +0.5 x 30+0.5 x 90=360秒。選択率〈右側の〉は330/(330+270)=0.55となる向

    (2 )第 1リンクの長さが左右異なる場合。

    第1リンク右側は ¥7190秒,左側は ¥'130秒, 第2リンクの右側 V130秒,左

    側¥']90秒とする。 T= 1/ (1/90+ 1/30) +0.25 x 30+0.75 x 90=97.5秒。選択率〈右側の〉は67. 5/ (67 . 5 + 7 . 5) = 0 . 90となる。

    4) Pulliam (1981)は強化率を最大化することが対応法則成立 の機制である乙とを

    数学的に証明している。

    5) 乙の事実は Lea(1979)でも示唆されている。

    6)ζの変換方4・で-は,たとえば3倍の強化量はそれが呈示される側の遅延時間を1/3{ζ減少させる効果をもっと仮定して,強化量を遅延時間の長さに変換する。変換方

    法についての議論は Ito& Asaki (1982)に詳しい。

    7)巌佐 (1981)は餌場の使用の問題で, いくつかの戦略の優劣がノマッチ内の餌の分

    布状態によって変わりうる ζ とを予測している。

    8)一般に, 開放食物環境 (openeconomy)と閉飢食物環境 (c1osedecononly)と

    が区別される (Hursh,1980)。前者は餌の供給が実験セッション内に限定されて

    いる場合を指す。 ζの問題については本稿ては触れなかったが, すでに ... ftbarca

    (1982)によって検討が加えられている。

    号| 用 文 献

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